気づいたら強盗に…?子どもたちに忍び寄る「闇バイト」の罠、その巧妙な手段
2022年05月23日 07:05
気づいたら強盗に…?子どもたちに忍び寄る「闇バイト」の罠、その巧妙な手段

 「ルフィ」事件以降、連日のように報道されている闇バイト関連の強盗や詐欺事件。つい先日も日中堂々と銀座の時計専門店に押し入って金品強奪を働き逃走するも、あっという間に逮捕された少年らによる強盗事件が起こったが、その無謀で杜撰、超暴力的な犯行手段を見聞きするたびに、恐ろしさと驚きで身が震える。 【マンガを読む】「死ねといったら犯罪になる?」子どもたちが「裁判」を行った  強盗だけでなく、特殊詐欺などでも未成年を含む若者たちが実行犯として捨て駒のように使われている数々の事件を見ても「うちの子だけは絶対大丈夫!」と断言する親がいるとしたら、それはもしかしたら「現実を知らなすぎる」といえるのかもしれない。  巧妙に子どもたちを犯罪に誘い込む闇バイトの仕組み、そしてあまりにも簡単に犯罪に手を染める子どもたち側の事情、彼らが逮捕されて初めて知る自身の罪の重さや一生ついて回る様々な償いの莫大さについて、元法務教官(少年院の先生で法務省の国家公務員)という異色の経歴を持つ、VTuberの“かなえ先生”に語ってもらった。  「闇バイトに応募する少年の場合、とにかく今日・明日のお金に困っている子が多い。理由は様々ですが、家出して寝る場所や食べるものがない、ギャンブルにハマってしまった、借金返済を迫られているが返すあてがない、スマホ課金、ホストやアイドルに貢ぐお金、誰かに脅されて金品を要求されている……。どれも親には『お金をくれ』とは言いにくい理由ですし、そもそも親が困窮していて、お願いしてもお金はもらえない、親との関係が切れてしまっていることも少なくありません。  『なんとかして今すぐお金が欲しい』と焦っているから、1ヵ月後に給料がもらえる普通のバイトだと間に合わない。ちょっとヤバそうだけど高額で今すぐお金がもらえるという裏バイトに走ってしまうのです。  裏バイト募集投稿以外に単独の『困っている人にお金を配ります! 』『個人的に融資します』という投稿もよくありますが、これも犯罪に引き込む手口のひとつです。SNS闇金と呼ばれるものですが、これはSNSを介した違法な個人間融資で、「お金が余っているから困っている人にお金を貸してあげたい」「少額融資します! 気軽に相談してください」などの甘い文章も添えられることもありますが、ほとんどが立派な闇金です。善意に見えるお金配りアカウントが、実は個人間融資アカウントだったなんてこともあります。融資を受けるまで非常に対応が丁寧な点も特徴に挙げられますね。  SNS闇金の多くは少額融資スタイルですが、実は街角にある消費者金融なんか目じゃないほどの高利で、あっという間に返済に行き詰まる。場合によっては最初は無利子と言いながら返済の際に法外な利子を付けられて返済を要求されることもあります。これで犯罪グループである相手方に多額の『借金』ができてしまいます。しかも融資の際に個人情報が相手に渡ってしまっている状態で場合によっては親の個人情報なども要求されることも……。  その後『金返せ! 住所や顔もわかってるんだから直接、取り立てに行くぞ! 』と脅されたり、場合によっては拉致されて暴力を振るわれた挙句、『金がないんなら、(裏バイトで)働いてもらおうか』となるわけです。この段階で警察に駆け込めばなんとかなるかもしれませんが、結局「何されるかわからない」「怖い」「1回だけなら……」と犯罪行為に加担してしまう人が多いのです。  今のは脅迫された例で説明しましたが、自ら直接裏バイトに応募した場合も流れはだいたい同じ。仕事の内容を聞かされてビビッて逃げようとしても個人情報を押さえられているから『家に行くぞ! 』『親や学校、職場にバラすぞ』と言われると、身動きが取れなくなって、犯罪に手を染める結果に。さらに一度罪を犯してしまえば、それをネタにもっともっと抜け出せなくなってしまいます。  一連の強盗実行犯の少年の供述にも『脅されて抜けられなかった』という報道がありましたよね。それはこういうからくりです。裏バイトはもちろんのこと、SNS等で見知らぬ人から融資を受けたり、お金をもらおうとするのは非常に危険ですし、うまい話なんかないと思ったほうがいいでしょう。」(かなえ先生)  一見、関連がないように見える『裏バイト』にタグ付けされた『お金配り』がこのようにつながっていると知り、驚愕すると同時に心配も募る。特に『お金配り』は著名人の支援活動として有名になったこともあって、善意ととらえてしまう人もいるだろう。  高校生の息子にはニュースを見るたび『裏バイト』の危険性について注意しているが、無邪気に『お金配り』に応募していたりしないだろうか。でも、ひょろひょろで気が弱く、殴り合いの喧嘩なら確実に負ける息子なんかに強盗させても、現場ではまったく役に立たず、絶対失敗するだろう……。募集してどんな人が集まるかわからないというのは犯罪側のリスクにはならないのだろうか。  「闇バイトがらみの強盗事件が注目を集めているので、闇バイト=強盗のように思っている人もいるかもしれませんが、闇バイトには特殊詐欺の受け子・出し子役だとか、薬物の受け渡し、犯罪に関わる金の送金用に自分名義の銀行口座を作って組織に譲る、詐欺に使うスマホの契約などなど、様々なものがあります。  最初はスマホや銀行口座の譲渡、次に受け子・出し子や運びなど、誰にでもできる犯罪意識の低い仕事からスタートして抜けられなくした後、かけ子や窃盗、そして強盗(傷害・殺人)へとシフトしていくんです。強盗みたいな力づくで凶悪な犯罪は、ガタイがよくてケンカ慣れした半グレ予備軍みたいな子が抜擢されるでしょうが、ケンカなどしたことがないおとなしい、いわゆる普通の子でも闇バイトに引きずり込まれる可能性は十分にあるのです」(かなえ先生)  聞けば聞くほど巧妙で罠だらけだ。子どもたちが呼吸するように使っているSNSには、こうした犯罪へと引きずり込む魔の手が無数に伸びているのだ。  後編「もし闇バイトに申し込んでしまったら? コスパ最悪の闇バイト、脱出する方法」では、闇バイトとコスパについて、闇バイトで逮捕されたその後などについてかなえ先生に解説してもらおう。

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