「メタバースのいま」と「VTuberのいま」を、GWの前後から覗き見る
2022年05月08日 12:05
「メタバースのいま」と「VTuberのいま」を、GWの前後から覗き見る

・『遊覧空間』のMVに、メタバースのいまが詰まっている  ゴールデンウィーク突入直前の4月28日、とある音楽とMVが公開された。音楽ユニット・ハジマルイオンの3rdシングル『遊覧空間』である。 【画像】『VRChat』でも同時開催された『VTuber Fes Japan 2023』の様子  ボカロPと歌い手という異色の組み合わせの音楽ユニットが手掛ける新曲のMVは、ソーシャルVR『VRChat』で全編を収録したという、類を見ないものだ。MVを手掛けたのは『VRChat』を舞台に活動するクリエイターチーム・VisitoR。これまで様々な音楽作品を、『VRChat』で収録した映像作品とともに送り出してきたチームだ。  楽曲自体も『VRChat』ひいては「メタバースのいま」にフォーカスした内容となっており、「遠い未来」でも「失敗した過去」でもなく、いま現在をメタバースで生きている人々の姿を躍動感たっぷりに描いている。そして収録に用いたワールド(仮想空間)は約100個にのぼり、同じくらい多数の人たちが制作に携わっていることが、エンドロールからうかがえる。かつてない規模とクオリティで紡がれる「メタバースのいま」を、ワクワクするような歌とともに体験してほしい。 ・「メタバースからは撤退しない」――四半期決算にザッカーバーグが語る  さて、現在進行系でメタバースに取り組んでいる企業といえばMetaだ。一部メディアの飛ばし気味な報道をきっかけに「Metaがメタバース事業から撤退する」というウワサも流れたが、4月27日の四半期決算のタイミングでマーク・ザッカーバーグ氏から公式に否定された。Metaは引き続き、メタバースへ注力するとのことだ。  また、メタバースだけでなくAIにも注力することを示し、AIとメタバースの両輪で今後展開させていくことを明かした。そして、2023年後半に新たなコンシューマー向けVRデバイスを「多くの人の手に取りやすい価格」で提供するとも話しており、VR・メタバース事業への継続注力はここからもうかがえる。  とはいえ、レイオフが実施されているのはたしかであり、「選択と集中」をどうしていくかはMetaの課題となりそうである。そして、「メタバースは“オワコン”」としたいのは何者なのか、まことしやかな話の発信源には少し意識を傾けてもよいかもしれない。 ・イベント多数なゴールデンウィークのVTuber業界  例年、VTuber業界ではゴールデンウィークになにかとイベントが開かれる。『ニコニコ超会議』内では音楽フェス『VTuber Fes Japan 2023』が開催され、様々なバーチャルアーティストがステージに立った。  『ニコニコ超会議』では、サンヨーブースにてアイマリンプロジェクトのライブステージも開催された。新曲を発表したアイマリンプロジェクトに加え、活動縮小中のナギナミプロジェクトも、ひさしぶりにステージに立った。興味深い点として、このライブステージは『VRChat』でも同時開催された。というより、『VRChat』では2日間にわたり、1日に3回公演されたため、なんなら『ニコニコ超会議』現地よりも公演回数が多い。  会場となったワールド「水晶宮」は、アイマリンプロジェクトの楽曲MVの「ロケ地」にもなっている場所だ。観客がVRのロケ地を訪れ、バーチャルアーティストのライブを楽しめる、というのは面白い施策だ。ライブそのものも、手練の企業たるGugenkaが関わっているだけあり、演出は万全だった。  新体制へ移行した『ななしいんく』は、YouTube上で単独のグループ3Dライブ「NANASHI Sing up vol.1-Sparkle-」を開催した。ステージも含めて全編フル3Dのライブの映像クオリティは高く、グループ統合後の『ななしいんく』がどのような方角へ進むか、その一端が垣間見えるライブとなっていた。  同じく新体制として立ち上がったGREE系列のREALITY Studiosからは、新規VTuber事務所『すぺしゃりて』が発足。第1期生オーディションが国内・国外同時を対象に開始した。ゲーム配信を中心に据えた女性VTuber事務所とのことで、同じくREALITY Studiosの事務所『FIRST STAGE PRODUCTION』よりも特化系となる。VTuber領域への注力を鮮明にしたGREE系列の今後の動きにも注視したいところだ。  英語圏事務所の代表格である『VShojo』からは、SilvervaleとVeibae、そしてNyannersが離籍を発表した。相次いで3人が離籍することとなり、所属タレント層が少し細ることになる。ただし、以後も各タレントごとのIPはタレント側に保持される、というのはVTuberとしては理想的な処遇だ。タレントの決断を尊重するという『VShojo』のスタンスが、こうした形から垣間見える。 ・フェイクニュース問題啓発はショート動画で  様々な面で2023年という時代性を感じる取り組みも一つご紹介したい。4月26日に公開された、YouTubeによるフェイクニュース問題の啓発キャンペーン「ほんとかな?が、あなたを守る。」だ。  このキャンペーンでは、YouTubeで活動するクリエイターが、フェイクニュースの持つ危険性などをショート動画で紹介。日頃よりWebニュースや動画を通して拡散しやすいフェイクニュースを拡散する前に「一度止まって考える」ように伝える内容が多い。総務省・国際大学GLOCOMも協力しており、キャンペーンとしてはかなり力が入っている。  このキャンペーンで展開されているコンテンツは、いずれも1分以内のショート動画だ。通常の動画以上に隆盛しているショート動画の採用から、本キャンペーンが訴求したいターゲットが若年層であることが察せられる。TikTok隆盛の2023年ならではのキャンペーンだろう。  VTuberからも、ホロライブの白上フブキと、にじさんじの星川サラが参加。白上フブキはショートアニメ「ホロぐら」を彷彿とさせる面白おかしいテイストで、星川サラはやや生々しい事例を持ち出して、安易なフェイクニュースの発信・拡散のリスクを伝えた。  VTuberもまた、安易な気持ちで発信・拡散されるフェイクニュースや誹謗中傷に常日頃悩まされている当事者だ。にじさんじ・ホロライブは共同で誹謗中傷対策に乗り出しており、業界各所もそれに続く形で強気の対応を示し始めている。  今回のキャンペーン参加も、こうした両者協働体制の一環かもしれない。何気なく流れてくるショート動画を通して、若者が「一度止まって考える」習慣を身に着けるきっかけができれば幸いだろう。もちろん、若者に限った話ではないのだが。

リアルサウンド

戻る