【龍ヶ崎リン インタビュー】不安に苛まれる中で得た“焦らず自分のペースで過ごす”という気づき
2022年03月28日 18:03
【龍ヶ崎リン インタビュー】不安に苛まれる中で得た“焦らず自分のペースで過ごす”という気づき

心地良いアルトヴォイスで数多くのカバー曲を投稿し、今年2月に念願のアーティストデビューを果たした龍ヶ崎リンが、VTuberデビュー3周年記念日に2nd配信シングル「追熟」をリリースする。ブラックミュージックとインターネットミュージックを軽やかにブレンドした、メッセージ性あふれる同作の制作過程に迫った。 龍ヶ崎リン インタビューのその他の写真 ──「追熟」はブラックミュージックとインターネットカルチャーのマナーがブレンドされたサウンドと、言葉遊びが効いたリリックが心地良い楽曲だと感じました。 自分がブラックミュージックやラップが好きなので、日本語だけど言葉遊びが多い楽曲にしてほしいとリクエストをして。殴り書きメモを読んでいただいた上で一度アザミさんの解釈で歌詞を書いていただいて、そこから解釈などを擦り合わせていきましたね。アザミさん自身もVTuberとして活動されているので、アザミさんが感じるVTuberのしがらみや葛藤もリンクさせて、歌詞に落とし込んでくださったところもあると思います。 ──リスペクトする相手に、誰に見せるわけでもない殴り書きのメモを手渡すのは勇気がいると思うのですが。 恥ずかしさはありました(笑)。字もめっちゃ汚いし、すごくクサいことも書いていたんですけど、その当時に胸に留めていた本音や、取り繕ってない言葉を伝えたほうがアザミさんも歌詞を書きやすいんじゃないか、文才をより発揮していただけるんじゃないかと思ったんです。あと、こっちが素直にぶつかったら、素直に返してくれる方なんじゃないかとも。出来上がった曲を聴いて、ありのままの殴り書きのメモを渡して良かったと思いましたね。 ──歌詞は龍ヶ崎さんのメッセージの詰まった、ひとつひとつの言葉の温度が高い歌詞に仕上がっています。それでいて言葉遊びならではのノリの良さが先にくるというバランスも絶妙で。 デモを聴いてまず浮かんだイメージが、雨が上がったばかりで湿度の残る街をスキップしている姿だったんです。それはやっぱりアザミさんの作る曲のグルーブだと思います。過去に不安を感じたり、立ち止まったりもしたけれど、今は前を向いている感じが伝わってくる楽曲なので、メロディーラインの作り方含め本当にアザミさんは天才的だと思いましたね。 ──唯一の生楽器がギターで、前に出すぎないけど存在感があるフレーズを奏でるので、ギターがラッパーで、ディーバが龍ヶ崎さんみたいに聴こえるのも面白いです。 わっ、それめっちゃ嬉しいです! 生のギターを入れることをアザミさんから提案していただいて一緒に詰めていったんですけど、その中でどんどん自分の中にイメージが湧いてきて。ヴォーカルの裏でギターがお洒落に遊んでいるような、歌っているような感じにしていただきたくて、ヴォーカルエディットと同じぐらいいろいろとオーダーをしてしまって、“本当に我儘を言って申し訳ない!”と思いながら何度もやりとりをしました。 ──“心に余裕を持つ”というメンタリティーを“追熟”という言葉に託すのも洒落ています。初めて知った言葉でしたが、果物などを収穫後一定期間置くことで、甘さを増したり果肉を柔らかくする処理を言うそうですね。 僕から提案させていただいたタイトルで。《どんな理由で遅れちゃっても/きっとフルーツみたいに過ぎたりしないよ》という歌詞から、フルーツに関する言葉をタイトルに使いたくて辿り着いたのが“追熟”でした。フルーツもものによっては時期が早ければいいわけではなくて、それは人もそうだと思ったんです。“ちょっと休むことによってその人の良さや魅力が増すこともあるから、君も焦らなくていいんだよ”というメッセージにぴったりだと思ったんですよね。 ──2作目ということで、より細部までご自身の心情を楽曲に反映できたのではないでしょうか? そうですね。やっぱり作る側が細かいところまでこだわると、聴く側にとってシンプルにすごくいいサウンドになると思うんです。こだわった部分は分かる人には分かるし、分からなくてもいいし、分からなかったとしても感じ方が違うと思う。自分も音楽への熱意がすごく大きい人の音楽を好きになるので、自分もそういうアーティストでいたいですね。「追熟」はデビューして1年半くらいの頃の自分を投影しているので、「Twilight Stream」よりも若干ネガティブな要素が目立つと思うんです。だから、自分にとっても“こういうふうに思っていた時期があったな”と振り返れる曲でもあるんですよね。 ──ところで、龍ヶ崎さんは2月末にギターが届いたとTwitterで拝見しました。 そうなんですよ。自分の曲がこの先増えていくという未来があるので、それらをギターで弾き語りできたらと思って練習し始めていて。いつになるか分かんないけど(笑)、いつか弾き語り配信もやりたいですね。あと、DJもやってみたいんです。僕の事務所にはカッコ良いオリジナル曲を出しているメンバーがたくさんいるので、メンバーの曲をつなげたDJも披露できたらと思っています。 ──VTuber 4年目、充実の一年になりそうですね。 自分でもすごく楽しみです。曲に嘘は織り込みたくないので、これからも自分の経験や事実を歌っていきたいと思っていて。配信だと自分の気持ちをダイレクトに伝えられるけど、音楽だと聴き手側が考える時間を持てるぶん、聴いている中で自然に物事を解決したり、気持ちが楽になることがあると思うんです。みなさんにとって僕の音楽を聴いてもらえる時間が、ご自身のケアをできるような時間になればいいなと。これからも音楽だから伝えられる、意味のある楽曲を作り続けていきたいです。 取材:沖さやこ

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