
ホロライブとにじさんじ、その「凄すぎる実力」「ビジネスモデルの中身」「意外な違い」を全分析…!
17年頃から注目され始めたUTuberやVTuberが今や結構なビジネスに発展し、VTuberプロダクションのIPO(株式上場)が相次いでいる。昨年6月8日に東証グロースに上場した「にじさんじ」のANYCOLOR社に続き、3月27日には「ホロライブ」のカバー社も東証グロースに上場する。 【写真】大人気コスプレイヤー・えなこの「美しすぎるショット」にファン騒然…! YouTubeやTikTokを楽しんでいる若者には知られていても中高年にはピンと来ないかも知れないが、IT業界がAIと並ぶ次の本命と期待するメタバースも睨んで、さらなる成長を目論んでいる。そんな両社をネットエンタメにも詳しい流通ストラテジストの小島健輔氏が解説する。 カバー社とANYCOLOR社、どちらのVTuberが人気なのか、ネット動画愛好家ならご存知だと思うが、世界のVTuber人気はカバー社に集中していると言っても過言ではないだろう。 カバー社の女性VTuber「ホロライブ」メンバーは世界のVTuberランキング(3月15日現在のチャンネル登録者数)のベスト8を独占してベスト20位中17人を占める。1位のGawr Gura(ホロライブEnglish)は429万人、2位の宝鐘マリンは233万人、3位の兎田ペコラは218万人、4位の白上フブキは208万人、5位にはVTuber Groupとしてのホロライブが198万人で位置している。 スパチャ(スーパーチャットというYouTube上の投げ銭)累計額の世界ランキングでも、潤羽ルシア(引退)の4億4056万円を筆頭に桐生ココ(引退)の3億9627万円、兎田ペコラの3億4676万円、宝鐘マリンの3億686万円までが3億円を超え、7位の葛葉(にじさんじ)を除いてベスト10を独占し、ベスト20中17人を占めている(23年3月15日段階)。 対してANYCOLOR社(にじさんじ)のVTuberは、チャンネル登録者数ランキングで9位に壱百満天原サロメ(174万人)、15位に葛葉(149万人)、スパチャランキングで7位に葛葉(2億5500万円)、13位に不破湊(2億245万円)、16位に叶(1億8721万円)が入るのみで、カバー社とは大差がある。 両者の特徴を際立たせているのが男女の違いで、カバー社のランクインVTuberが全て女性であるのに対し、ANYCOLOR社のランクインVTuberは全て男性だ。ファン層も、女性アイドル主体のカバー社は男性が9割近く占めて年齢層も幅広いのに対し、芸人色の強いANYCOLOR社は若い女性や学生が多い。 ANYCOLOR社は22年4月期の売上高が前期から85.5%増の141億4600万円、営業利益が188.6%増の41億9100万円、純利益が3倍増の27億9300万円と急拡大している。営業利益率は29.6%、純利益率も19.7%とカバー社より格段に高い。 23年4月期見通しも3月15日に再上方修正して売上高が76.7%増の250億円、営業利益が2.2倍増の92億円、純利益が2.3倍増の63億8000万円と躍進は止まらず、営業利益率は36.8%、純利益率も25.5%と加速しており、プライム市場への区分変更を申請している。 カバー社は22年3月期の売上高が前期から138.7%増の136億6300万円、営業利益は13.5%増の18億5500万円、純利益は1.9%増の12億4400万円と、売上は伸びても営業利益や純利益はあまり伸びていない。営業利益率は13.5%、純利益率も9.1%と収益力はANYCOLOR社に見劣りがする。ライブ/イベントの仕込み費用や商品販売の急拡大に伴う原価率の上昇に加え、23年4月にスタジオ、6月に本社を移転する減損損失(2億1148万円)が利益を圧迫している。 23年3月期見込みも売上高が32.1%増の180億5600万円、営業利益が16.9%増の21億6900万円、純利益が14.7%増の14億2700万円と売上の伸びの割に利益は伸びず、営業利益率は12.0%と前期の13.5%、純利益率も7.9%と前期の9.1%から低下する。商品販売の急拡大に伴う物流費や陣容拡大に伴う人件費に加え、メタバースのエンタメ・プロダクションを目指しての巨大スタジオ投資(4914平米、総投資27億5000万円)で減価償却負担が当分続く。 投資の回収サイクルに入ったANYCOLOR社と投資負担が続くカバー社という収益力の格差は否めないが、カバー社のメタバースに通ずる3D・CG技術とエンタメ演出のセンス、世界を席巻する「ホロライブ」メンバーのタレント価値は高く評価されるべきだろう。 さらに連載記事『アバターからトイ・ドールまで「着せ替え人形」が大流行する時代の「正しい見方」』では、いま起きている“着せ替え人形”ブームの実態についてレポートしよう。
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