
にじさんじ所属エクス・アルビオがお笑いから学んだこと “特大トロール”すらも愛される、真面目で愉快な英雄
現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。 【動画】2年ぶりに再集結した「英吸不滅」練習配信の様子 メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ2年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加してきた。 元1期生がデビュー5周年を迎え、彼らを筆頭に現在約150名のメンバーが所属・活動しているにじさんじ。その層の厚さで今後も大きな影響を与えるだろう。 今後しばらくのあいだ紹介していく30~40名のメンバーは、にじさんじ始動から2年目にあたる2019年2月8日以降にデビューしたメンバーだ。現在のにじさんじのなかでも主軸を担う、重要メンバーが揃っている世代でもある。 今回紹介するエクス・アルビオは2019年5月17日に初ツイート、5月21日にYouTubeで初配信し、デビューを果たした。異世界の英雄であり、「エビオ」という愛称でも知られる。 ちなみに、2019年5月当時にエクスとレヴィ・エリファの2人がデビューした段階では、70人から80人ほどのタレントがにじさんじに所属していた。 現在ではその2倍以上の人数が在籍・活躍しているが、2019年にデビューしたメンバーはかなりの大所帯ぶりで、「3週に1度は誰かしらデビューする」というハイペースぶりだった。実際、エクスとレヴィの直前にデビューした雪城眞尋・鈴原るるは同じ5月の1日に初配信をしたばかりで、ひと月に満たないペースでのデビューとなっている。 さまざまなゲームを難なくプレイしてみせるエクスだが、高いプレイスキルを存分にみせつつも“ゲームに嫌われる”不憫な一幕もあったりと、賑やかさが絶えないゲーム配信を続けてきた。 なかでも得意としているのが、FPS/ガンシューティングゲームの類だ。これまで『Apex Legends』『Rainbow Six Siege』『Fortnite』といった著名なゲームを数多くプレイしており、今年に入ってからは『VALORANT』にかなり熱を入れている。プレイするゲームの内容はもちろんだが、国内外のストリーマーや様々なプロゲーマーにも詳しいあたり、彼がFPSシーンのファンであることがよく分かる。 2020年ごろから多く開催されるようになった大型カジュアル大会、『CRカップ』や『VTuber最協決定戦』などにも幾度となく出場してきており、『Apex Legends』を使っての開催がラストとも噂されていた第10回『CRカップ』では、Crazy Raccoon所属のSelly・ホロライブ所属の常闇トワと共にチーム「WAGAMAMA'S」を結成し、みごと優勝を果たした。こういった経験値や知識量もあり、FPSゲームを多人数でプレイする際はなにかと頼られるシーンが目立つ。 こういった大型大会やカジュアルな企画に何度となく登場してきたことも影響し、様々なVTuber~ストリーマーともコラボ配信をしてきたエクス。 その顔ぶれもさまざまで、ZETA DIVISIONの関優太、FNATICのSPYGEA、CRAZY RACOONのかわせ、『ストリートファイターV』の元プロゲーマーであったはつめなど、元プロゲーマーでありストリーマーとして活躍する面々とも積極的にコラボをおこなってきた。同じVTuberとして活動するぶいすぽっ!の胡桃のあ、ホロライブの常闇トワ、774.incの杏戸ゆげなどとは、先に書いた大型大会・企画でチームを共にしてきた仲間でもある。 意外な繋がりでいえば、長年ゲーム配信者として活躍している、からつけあっきぃ、まろ、「すとぷり」のころんとのゲーム動画も投稿されており、さらにはゲーム好きとしても知られるお笑い芸人、インパルス・板倉俊之ともコラボ配信をしている。 エクスの、にじさんじ内の先輩・後輩らだけにとどまらない多岐にわたる友人関係を支えるのは、彼が持つ明朗快活な振る舞いとで高い社交性にほかならない。ほぼ初対面の人たちとコミュニケーションを取るだけでなく、生配信を通して数千人近いリスナーたちをワっと盛り上げることも含めれば、かなり高いレベルの社交性やお笑いセンスを有していることがわかる。 彼がここまで多くの人に声をかけられるのは、単にゲームの腕前や経験値だけで選ばれているわけではない。「面白い配信を生み出してくれる」タレントとしての高い能力も広く知られているからだ。そんなエクス・アルビオによる、“エビオ流トーク術”を追いかけてみよう。 ・にじさんじの同僚やファンの間でもたびたび話題になる「エビオ構文」 明朗快活で社交性も高いエクス・アルビオ。実は若干の人見知り気質で、それ故に丁寧口調を欠かさないという一面もあるが、いちど距離感を掴むと持ち前のトークでバッチリと場を盛り上げてくれる。 にじさんじの同僚やファンから知られているエビオ流トーク術でもっとも有名なものといえば、「エビオ構文」であろう。 「エビオ構文」とは、彼独特の言い回しで発せられる内容で、リスナーに向けて賛同したり肯定的内容を話したかと思えば、断りなく否定的かつ文脈に関係ない話しを盛り込むというものだ。いわゆる「手のひら返し」といわれるものだが、彼の場合どこまで意識的・無意識的に発したのかがほとんど判断がつかないこともあり、天然ボケな側面が強い。 にじさんじのスタッフからもよく認知されており、にじさんじ公式チャンネルにおいて、とある時期までの有名な構文をまとめた切り抜き動画が制作されたり、公式番組「にじクイ」の栄えある初回配信でも問題として出題されるほどでもある。 おもわず聞き流してしまいそうになるが、よくよく考えれば明らかに矛盾した内容を事も無げに発していくことで、リスナーもツッコミのコメントを打ちやすく、その後に切り抜き動画などで知った人にも笑ってもらえるというエビオ構文。あまりにもテキトーな返事をしてしまうため、「エビオには虚言癖がある」とまで言い切る同僚もいるほどだ。 ツッコまれても後に引きずることは少なく、カラっと笑って次へ次へと話題を進めていくのも、エクスの特長だ。正論で詰められてもうまくはぐらかし、一般常識にまつわる話題や日常会話からひょうきんな小ボケを生みだしたり、かと思えば「知っていて当然では?」と思える話題を本当に知らないからと「それなに? 知らない」と聞き返して会話を広げようとする。 こういった会話のやりとりの節々から、彼のコミュニケーション上手・付き合い上手な一面が見出せる。声が大きく、通りやすい声質であることもあってか、調子のいい(人の気を引くのが上手い)人物としてリスナーや同業者から好かれているのだ。実際インパルス・板倉俊之は2~3度ほどしかエクスとコラボしていないが、「何が何でも褒めてくれる」とエクスを評しており、褒め上手な一面が印象深く残ったようだ。 また、パっと言葉を発したり返事ができる反射神経・反応力は、生配信というリアルタイムで行く末を見守るリアリティショーにおいてはとても重要であろう。しかも「エビオ構文」ともいわれるようなおかしな応対も挟むのだから、エクスがどんなボケをしてくるのか? と期待して見てしまう節もある。 そんなエクス本人はかなりのお笑い好きということでファンの間でも知られている。 インパルス・板倉に関しても「5年ほど前に岡山のイオンで握手してもらったことがある」と話しており、地方巡業やイベントにも足を運ぶようなタイプのお笑い好きであることが分かる。 それだけでなく、配信中に様々なお笑い芸人のネタを口にすることも多く、なかでもジャルジャルの話題をあげることは多い。これは、ジャルジャルがYouTubeチャンネルを通して毎日ネタ動画を投稿していることも、話題にあげやすい一因ではあるだろう。 2020年10月14日の雑談配信で配信用の新背景をリスナーにお披露目した際、「白背景に木箱が2つだけ」というあまりにもシンプルすぎる背景にリスナーから驚きの声があがり、あることに気付いた一部のリスナーからは「ジャルジャルじゃないか!」というコメントが数多く届くことになった。そう、この日お披露目された新背景はジャルジャルのコント動画でよく見る「アレ」と酷似しているのだ。 ちなみにこの背景、パッと見では写真のようにも見えるが、実際はエクスのビジュアルを手がけたイラストレーター・ケースワベによって描かれた立派な「イラスト」である。 配信が続くかぎり見られる屈託ない笑顔・ひょうきんさ・小ボケの数々は、エクスがお笑い芸人から学んだ「お笑いのマナー・テンション」なのかもしれない。そんな彼だからこそ、自身やリスナーも驚きのタイミングで「笑いの神」に愛されることが多い。 ・天然な側面から、ときに「やらかし」も起こしてしまうエクス・アルビオ グループや集団で集まったときは通りの良い声が影響してか、指示を出す側に回ることもあるエクス。一体感を大事にしようという姿勢はみせつつも、「小ボケをやたらと挟む」「応対がいきなりテキトーになる」といった普段の振る舞いを知る同僚やファンから「本当に大丈夫?」「なんか不安」といった声があがることもしばしばだ。 実際、これまでエクスは配信内外において良い意味でも悪い意味でも「やらかした」ことが多い。イブラヒムとの早起き対決では「2人とも遅刻する」という、リスナーも想像していなかった結果を生みだした。 事務所の後輩であるアルス・アルマルとのコンビが人気を博すと、内気でツッコミ型なアルスとひょうきんでボケ型なエクスとの掛け合いから多くのハイライトシーンが生まれることになった。 エクスのひょうきんな振る舞いや小ボケに対して「何なんだおまえ!」とアルスからキツめにツッコみをいれられることも多く、こういった出来事も「エクスはふざけるタイプ」という認識が広まった一因といえよう。 「信頼できそうだけど胡散臭い」というイメージは、にじさんじ外のストリーマーや同業のVTuberの間でも徐々に広まっている。悪ふざけのつもりがちょっとした大事になったり、いつも通りのプレイングをしてもチームメイトから冗談交じりにトロール行為(註:オンラインゲームにおける迷惑・利敵行為のこと)とまで言われてしまうこともある。 もちろん本人のあずかり知らぬところで生まれるボケもあれば、おもわぬ悪評となって広まる部分もあるだろう。配信映えやリスナーを楽しませる面白シーンを生み出すタネを長年撒き続けてきたことで、本人はいたって真面目に考えてプレイをしていても「面白シーン」と受け取られてしまう恰好となっている。 2023年3月13日には、4月に開催予定となっている『VTuber最協決定戦 ver.APEX LEGENDS Season5』への出場を発表。メンバーは葛葉と不破湊、そしてエクスの3人で、2年前に出場したチーム「英吸不滅」としての再出場となった。 メンバーが公開された日にはさっそくカスタム開催して練習を開始し、葛葉と不破からは「IGL」(註:インゲームリーダー。チームの作戦指示をする役割)を任されている。ブランクを埋めて最優の結果を叩き出すためにかかさぬ努力をしていくはずだろう。 加えて、以前に出場した際は真面目アリ・お笑いアリの名物トリオとして人気を掻っ攫っており、「大会結果」だけでなく「エンターテインメントとしての配信内容」も注目されているチーム「英吸不滅」。今大会以降もエクスがどのようなアクションを起こすかは見ものだ。
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