MUCC逹瑯「可能性をもっと広げたい」ソロ活動での吸収とバンドへのフィードバックとは:インタビュー
2022年03月15日 12:03
MUCC逹瑯「可能性をもっと広げたい」ソロ活動での吸収とバンドへのフィードバックとは:インタビュー

 結成25周年を迎えたロックバンド・MUCC のボーカル逹瑯が3月15日、ソロプロジェクト第3弾として2ndシングル「残刻」をリリース。前作に続き、サウンドプロデューサーに大島こうすけを迎え、より洗練されたロックサウンドを追求。逹瑯のポテンシャルが如何なく発揮された力作だ。2022年2月よりソロプロジェクトを走り出した逹瑯。これまで多種多様なカラーの作品を発表し、各地で精力的にライブを敢行。MUCCという母体で25年活動し続け、ソロとしての新世界で逹瑯が今、何を想い、どんなビジョンを描いているのか――本作の話題を中心に、あらゆる方面から逹瑯の今の想いに迫った。 【動画】逹瑯「残刻」ミュージックビデオ ■「もっと壊したい」こととは? ――逹瑯さんが今ハマってることは?  もう、『BLUE GIANT』ですよ! 漫画から音が聴こえてくるという感じで評判がいいんです。それを実際に映画版で観て音として聴いて感動したいなと。もう2、3日で30冊くらい読んで止まらないです。 ――一気読みですね。  漫画の音楽はジャズで、知らない文化があるから面白かったりするんです。バンドをやっているから余計に面白い部分もあって。あとハマってるのはゲーム配信ですかね。『ドラゴンクエスト』とか。 ――ドラクエのような物語性のあるのがお好き?  きっとそう思います。あと、コツコツとレベル上げとかするのが好きで。お金貯めたり装備を整えたりと、そっちのほうが好きかも! ――なるほど。さて、ソロプロジェクトが走り出して1年が経ち、ソロをスタートした時と今とでの心境の違いは?  いろんなところが重なるんですけど…SATOちが抜けたところから始まり、「ソロをやってみるか」となりまして。今までMUCCでしか音楽をしていなかった人が、MUCCを離れて別の人と一から音楽を完成させて進む作業の中で、より音楽自体への理解度が深まりました。MUCCでやっているよりも積極的に触れる実感や、「自分でなんとかしなきゃ」というのも増えてきたし。自分でもわかってきたことが増えてきて、MUCCにフィードバックできているところが凄く多いです。 ――アルバム『非科学方程式』『=(equal)』や今作を含む各シングルなど、非常に多彩な音楽性のアプローチとなることは想定内だったのでしょうか?  広がる幅がちょっと違うだけで、ソロでやっている方はMUCCとは違う軸の広がりをみせていると思うんです。「こんなことやったことなかったな?」みたいな広げ方を手探りでやる作業はMUCCでやってきて慣れてはいるんです。ただ、予想もしていなかった方向に伸びていくものがあるから戸惑いはありつつです。新しい扉を開いていく作業はMUCCでだいぶタフになってたんだなと思います。 ――ソロのライブMCで、「ソロを始めてわかること、気づくことがあった」と仰っていました。その詳細とは?  自分が得意なこと、できないことなど、一つのことをずっとやっていると見えていくものも見えないものもたくさんあると思うんです。違うことをやることによって気付きがたくさんあったと思います。 ――その気付きによって、音楽以外の面でも影響があったりも?  人との接し方などは今絶賛探っている感じです。バンドとソロとの大きな違いとして、バンドはみんな自分のバンドだから自分の仕事をしっかりするんです。その仕事の仕方が、バンド正式メンバーとソロのサポートメンバーとで違うんです。サポートメンバーに囲まれてやる時に、ずっと昔から知っている人だけど、ステージ上での立ち振る舞いなどが「自分はサポート」という感じなんです。 ――あくまでメインあっての、というような?  一線を飛び越えちゃいけないという感じがしていて。「それをどうやってもっと」と思うと、ソロなんだけどバンド感を出したいと思って変な感じだな、みたいな(笑)。 ――ライブを拝見して、サポートメンバーだけどファミリー感のような印象がありました。オーディエンスには伝わっているのかと。  もっと壊したいんです。サポートだからメインのアーティストの邪魔をしないように、支えよう、気持ちよくやってもらおう、というのもわかるんですけど。でも、もっとアグレッシブにやってきて欲しいんだよなあ…という。バンドだと俺が一旦引いていても「他のメンバーがばっちりパフォーマンスしてくれるから任せておけるし」というのがないので。そこはきっとツアーをやると変わってくると思うんです。 ――メンバーの一体感が育まれていくような?  みんな勘がいいので、一回やれば「こういう感じか」と空気感を掴むけど、今のところ掴んで終わっちゃっているので。ツアーをやってブラッシュアップして、最終的にファイナルでちゃんとしたものを観せられるように、というやり方をしたいなと。でも今、時間ないなあみたいな(笑)。 ■最も“残酷”だと感じるもの ――2ndシングル「残刻」は足立房文さんとの共作曲、編曲が大島こうすけさんですね。完成した率直な感想は?  最初のデモを足立があげてきた時は、ここまでオリエンタルなテイストではなかったんです。メロディラインは変わってないけど、大島さんのアレンジになった時、オリエンタルさとフュージョンなどの香りが入って凄く綺麗な世界観になりました。このアレンジが入って楽曲の景色が広がり、歌詞をつけていきました。相乗効果で面白い感じに仕上がったと思っています。 ――作曲やアレンジで面白いと思った点は?  普通にびっくりしたのは演奏がクソ難しくて。 ――それは一リスナーとしても感じました。ライブの時、大変そうだなと。  これ、誰がライブで演奏するのって(笑)。 ――メンバー泣かせというか。ベースラインからして凄いことになっていますし。  本当にそう(笑)。ベースめちゃめちゃヤバいもん! ――それも魅力のひとつですよね。  とはいえ、そこだけではなく足立も悪いんですよ。歌にしても「これ、ブレスどこにあるんだよ?」という感じで。 ――相当な難易度の歌ですよね。しかし、パワフルな逹瑯さんだからこそ「もっといけるんじゃないかな?」という足立さんのプッシュだったりするのでは?  いやあ…どうかなあ(笑)。 ――いけるところまで行った、という制作だったのでしょうか。  まあ、やりとりも面白かったな。前作「エンドロール」の時は、歌詞のイメージなどを色々もらったんですけど、大島さんは1回目で俺の感覚を掴んでくれたっぽくて。今回に関しては歌詞だなんだというところはほぼほぼノータッチで何も言われませんでした。 ――「残刻」というタイトルに込めた想いは?  残酷なものって限られているもので、一番残酷だなと感じるのは「時間」なんですよね。残された時間、限られた時間、迫ってくる感じ――それが今回の曲のキーワードです。それで“ざんこく”という言葉をあてる時に、残りを刻む“刻”として、いくつか“ざんこく”という漢字がある中で「残刻」が一番意味合い的に、はまるんです。ストレートな“残酷”よりこっちの方がいいなと。 ――歌詞はどんな着想で書いたのでしょうか。  日常の出来事をファンタジーに置き換えて、リアルなことだけど誰にでも起こるような、それを幻想的にしたいという感じで書いていました。夜空や宇宙までというような世界観に花びらが舞っているようなイメージの中で、綺麗だけど綺麗さゆえの物語を広げたら、凄く残酷な話だなというような空気感がずっと頭の中に映像や匂いが浮かんでいたんです。  それをどう言葉に落とし込んでいこうかと。「ここまで書いちゃうとウェットになり過ぎるな」「もう少しドライにしたい」とか、そういう温度感を考えて書いた歌詞です。 ――「残刻」というタイトルなのでダークなテイストなのかなと思ったのですが、歌詞を読むとそれだけではないと感じました。  けっこう「これ」という答えが自分の中にあって、凄くフォーク的な「完全にこの景色だよね」という限定された物語の歌詞を書くのも好きなんです。そういうのが、アルバム1枚10曲の中に1、2曲くらい入ってるのが好きで。 ――限定というのは「この曲はこのイメージしかない」という?  そう。確実に「この人のこの歌でしかないよね」という。それ以外の曲はけっこう濁して、誰が聞いても自分のどこかのタイミングの経験などに少しリンクする部分があるとか、「こうも解釈できるよね」というような。その時の気分によって聴こえ方が変わってくる濁し方もけっこう好きで。そういうのがたくさんある中で、前者のような曲が入ってくるとやはり映えますし。  この曲は<君に出来る事をずっと考えてた>から書き始めて、最後の締めが<君にできる事 やっと答えが出そうだ>というところの、“君にできる事の答え”ってどっちなのと。ポジティブなこと、ネガティブなことと、そこを含ませて答えを提示しないというのが凄く好きで書いていました。これは俺の中での答えはあるけど、聞き手側の解釈に委ねて、その人の生活の中でどっちになってもいいですし。  今書いている状況って面白いんです。MUCCの振り返りツアーをやっている今、その時はその時の完璧な自分の中のプライベートな答えがある曲があって、これがまた時間が経ってまた歌い直すと今の心境にハマってきてまた違う意味合いで歌えたりします。自分の曲なのに変わってくるんです。 ――すると、曲も生き物という側面もある?  昔、何かで読んだつんく♂さんの言葉の「曲は世に出した時点でリスナーその人のものになる」という感覚が凄く好きなんです。その人の生活の一部になっていてほしいなという感じだから、それでいいのかなあと。  「この曲をこういう気分の時に聴きたい、歌いたい」という曲がいっぱいあるアーティストが好きなんです。それがどんどん残っていく音楽になるかなという気がしていて。今回のカップリングの「恋心」は、歌詞的には完全に限定されているシチュエーションの曲ですよね。 ――今回、jealkb(ジュアルケービー)へ楽曲提供された「恋心」をセルフカバーしたのは、今だからこそという想いが?  前回「エンドロール」のカップリングで、曲提供したのをセルフカバーで入れたんです。それで今回カップリングをどうしようかという時に、「今回もセルフカバーだと面白くないですか?」と言われたんです。それで確かにいいかもと思い、この曲が好きだったのでやるかと。どうせやるんだったらアレンジもガラッと変えて新しいパートを付け足してやるかという感じでやりました。 ――原曲はストレートなロックアプローチですが、今回はアコースティックギターやツインリードギターなどが印象的ですね。  足立に「少しロック感のある、あまりスローになりすぎないバラードにしたいんだけど、基本的な聴こえ方はバラードにしたい」と言ったんです。そしていい感じになったかなと。あと、ちょっとだけテンポを上げてくれといったくらいですかね。 ■今後のロックシーンのビジョン ――最近のロックシーンについて思うことはありますか?  ここ4、5年から向こう4、5年にかけて、きっとマーケットが小さくなってくるだろうなって気がするんですよね。俺たちがガキの頃にテレビで観てロックに衝撃を受けたくらいの世代の感受性を持っている子たちが、インターネットで流れてくる音楽などに衝撃を受けて、「こういうのやってみたい」という方向に流れていくと思うんです。  そうなってくると、若い世代の需要が流れていっているからロックファンの年齢が上がっていくと思うんです。メタルファンと同じような感じがロック全体で起きるようになる気がしていて。音楽も多様化しているから、今は歌い手やVTuberなど、それこそ『ニコニコ超会議』じゃないけど、あれのもっと音楽に特化したフェスみたいのを幕張とかでやったら物凄くお客さんが入ると思うんです。それこそヘッドライナーをAdoちゃんとかにして。 ――確かにそのビジョンの可能性は濃そうですね。“ネットの音楽”というような見方も出て。  日本に限定して言っちゃったら、一番音楽にお金を使っているのはオタク文化の方々だと思うんです。昔だったらお金を払わないでも、YouTubeやニコニコ動画などで音楽コンテンツを観られていて、「ネットに流していてお金になるの?」みたいな感じの感覚だったと思うんです。結果として、その人たちが今一番、音楽コンテンツにお金を使っている気がして。そうなってくると、もはやサブカルじゃなくてメインストリームじゃないかという。売れ方的にはそうなってくるんだろうなという気がします。  でもその反動で、何年かして生のサウンド、熱いもの、もっと人間味のあるロックサウンドに戻ってくると思います。カッコいい若いロックバンドがドンと出てきて、それに追従して何バンドか出てきて、またひとつの流行りができてとなってくるのは5年くらい先じゃないですかね。 ――なるほど。ロックシーンではない方面でも最近の傾向についてもうひとつ、ChatGPTという精度の高い人工知能チャットボットが話題です。チャットで提案すると、優れた内容が返ってくるという。  それ、俺と足立がやってることみたいだよね(笑)。 ――優秀なパートナーという意味合いではそうかもしれません(笑)。逹瑯さんのビジョンを足立さんがちゃんと把握しているというか。  今度それで曲作ってみようかな?「誰しもが感動する至高のバラードのサビのコード進行ちょうだい」って言って(笑)。 ――わりとそういった実用性の可能性も秘めているようなんです。とはいえ、まだ人間の情念込みの精度はそこまででもないかな、といった印象もあったりします。そこで、生身の人間が音楽をやる上で最も大切にしていること、逹瑯さんが表現者として大切にしていることとは?  その人にしか出ないグルーヴや音や声じゃないかな。空気感もそうですね。MUCCで言ったらドラマーが変わって、サポートドラムのAllenが一番苦労してるのは空気感だと思うんです。音符通りに演奏するのではなく、「ここで歌ってて後ろに引っ張りたくなるんだよね。この感覚わかるかな?」という“感覚”で、それは難しいことだと感じています。その人その人の感情がどう動くかという理解度や空気感などの共有、そこをAIに完全に表現されたらどうしようみたいな感じがするかなあ…。 ――確かに、感覚の共有は人間にしかできないと思います。人と人とのライブ感が大切?  うん。あと、「この人ありきだからこの言葉の言い方がいいよね」というのもあると思います。歌詞の乗っけ方にしてもそうです。俺がこの言葉を歌うのには違和感があるなというさじ加減って、人間の感覚がないと出てこないと思います。 ――その人らしさ、のような?  そう。それがその人その人の正解なので。 ――なるほど。では、人間の感情面に関してもうひとつ。人生行き詰まるほどの悩みや行動の失敗があって落ち込んでいる人に、逹瑯さんはどんな言葉をかけますか?  逆に、「そこまで悩み抜いて考えぬいて出した答えで、そこまで考えられて凄いね」と、思います。俺にはできないことをしてる人は凄いと思う。その時の状況によると思いますけど、ただ運がなかったのかとも。どうしても頑張ってもどうにもならないことってあるから、それはしょうがないとして、そこまでの結論に達するまでのプロセスを、それだけかけられたのは凄いことだなと。「そこは自慢していいんじゃない?」「自分を褒めてあげていいんじゃない?」と思う。  全然頑張らなくて諦めてしまう人も多いし、見切りが早いというか俺もそのタイプなので。効率悪いなと思うと深く追わないで…これ、良くないことかもしれないけど、諦めが早いと思うので。色んな悩みって諦めってことでもないと思いますけど、そこまでちゃんと諦めるとか逃げることをしないで向き合えて最後まで行ける人は凄いなって思う。そういう、何事も経験した人って、後から人に与えられる人になると思うんです。 ――自分を責めることはなく、逆に自分を良い方に認めていいのですね。さて、逹瑯さんの今の課題は?  もうちょっと喉のコントロールが上手くなりたいなということです。あと、もっと自分を信じて大丈夫という自信を持ってツアー初日からステージに上がれるようになりたい。やはり一本ちゃんと無事に終えること、一回ちゃんとツアーの初日ができたというのが自信になるから。それを、こなすかこなさないかが凄く大きくて。  緊張しないでリラックスしてステージに上がるのが一番成功率が上がるはずなんです。「1回やったからもう大丈夫、できる」と、2回目からはどんどんリラックスしていくけど、1回目から「大丈夫、できる」というリラックス具合でステージに上がれるようになったらもっといいのになと思うんですけどね。 ――かなりハードルが高い課題ですね。  うん(笑)。 ――ソロ活動で深く残したい、刻みたいと思っていることは?  残したいというのはあまりなくて。自分の可能性をもっと広げたいですよね。残すという放出系ではなく、吸収したいですね。ソロの方では色んなことをやって吸収して、MUCCの方がきっと放出系なんだと思う。今までの感じだと音楽的に吸収するという活動をプライベートでも全くしてなかったので、吸収するというステージを、上手く遊びながら楽しみながらやっていきたいと思います。【取材=平吉賢治】 (おわり)

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