
VTuberがメジャー音楽シーンを席巻する理由とは 再生回数1007万回を超える注目のアーティストも〈dot.〉
VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社が、東証グロース市場への新規上場を承認され、話題となった(上場日は3月27日予定)。ここ数年、エンターテインメント・シーンで大きな話題を集めているVTuber。その存在感は、音楽業界にも波及している。 【1007万回を超える再生数を記録した大注目VTuber】 2010年代まではオタクカルチャーの一つとして捉えられていた部分もあったが、2020年以降はそんな“壁”を越え、一つのジャンルとして確立されるようになった。 その流れをさらに押し進めているのが、J-POP、J-ROCK系アーティストとのコラボレーションだ。 先に挙げたMori Calliopeの最新アルバム『SINDERELLA』にはJP THE WAVY、FAKE TYPE.といったヒップホップ系アーティストが参加。さらに人気バンドTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也(V/Gt)が手がけた楽曲「Wanted, Wasted」が収録されたことも話題を集めた。 ■再生回数1007万回を超えるほどの反響 VTuber3人によるユニット“Nornis”の1stシングル「Transparent Blue」は、椎名林檎、GLAYなどの楽曲を手がける亀田誠治がプロデュースを担当。その亀田も「Nornisの3人は声質も違うし、音域や得意なところも違って。そのバランスがいいんだよね。あとね、3人とも歌への取り組み方が熱い」と公言している。 そして、今最も注目を集めているのが星街すいせいだ。今年1月にリリースされたアルバム「Specter」には、Ayase(YOASOBI)、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)、ボカロP・じんなど、幅広いジャンルのクリエイターが楽曲を提供。人気YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にVTuberアーティストとして初めて出演し、1007万回を超える再生数を記録した。 YouTubeやTikTokをはじめとするインターネットでの知名度の高さ。モーションキャプチャーや3D技術の進化に伴う動画のクオリティ。そして、J-POPで実績を残しているアーティストとのコラボ。VTuberアーティストが躍進している理由は様々だが、いちばん大きいのはやはり、アーティスト自身が表に出ず、“見た目”によるイメージをコントロールできることではないだろうか。ここ数年、Ado、yama、ずっと真夜中でいいのに。など顔を出さないまま活動を続けているアーティストが続々と登場しているが、彼ら・彼女らと同じく、実際のルックスがわからないぶん、“音楽”“歌”そのものに集中できるのは大きな利点。“身バレ”のリスクがないことは、アーティスト本人のメンタルヘルスの維持にとっても大きな意義があると思う。 この先も大きな発展が期待できるVTuberアーティストのシーン。夏フェスや地上波の音楽番組で“普通に”彼女たちの姿を目にする時代は、すぐそこまで迫っている。 (森 朋之)
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