小森めと移籍の動きに見る「VTuber業界の成熟」と、一週間でびっくりするほど広まったmocopiの輪
2022年01月30日 12:01
小森めと移籍の動きに見る「VTuber業界の成熟」と、一週間でびっくりするほど広まったmocopiの輪

 「VTuberの事務所間移籍」は、ありそうなようで実は意外と発生していない。理由は諸説あるが、本人だけでなく、アバターの権利なども紐づきがちな存在だから、と考えられている。2019年に雨ヶ崎笑虹が「AVATAR2.0」から「Palette Project」に移籍した事例があるくらいである(現在は独立)。暗黙の了解として「難しいもの」と思われていただろう。 【動画】「ぶいすぽっ!」への移籍を発表する小森めと  そんな業界の空気に大きな一投が投じられるかもしれない。1月26日に「774inc.」所属の小森めとが、「ぶいすぽっ!」へ移籍することを明かしたのである。2月1日より、名義やアバター、YouTubeチャンネルなどはそのままに移籍が予定されている。  小森めとは「774inc.」内でも元々の所属グループだった「ブイアパ」が先日解散し、「774inc.」直属のVTuberになったばかり。そしてFPS系ゲームなどの腕も立つゲーマーであり、様々な大会への出場実績も持つ一人だ。ゲーム系ストリーマーとしても認知度の高い「ぶいすぽっ!」への移籍は、自身の活動の志向ともマッチする、よい”キャリアパス”だろう。  「774inc.」は小森めと以外にも、グループから離脱してソロタレント化するケースが直近いくつか発生している。「タレントのやりたいことを第一に考える」という方針のもと、所属などを柔軟に組み替える動きは、今後業界全体にも波及してほしいところだ。  また、移籍先となる「ぶいすぽっ!」では、新たに「ぶいすぽ研究生制度」がスタートする。もともと「ぶいすぽっ!」には、オーディション合格後にスキルアップに取り組む「努力枠」というものが存在したが、それを拡張し、さらに多くの人に「ぶいすぽっ!」からのデビュー機会を設けようという制度とのことだ。  研究生制度は今後、常設オーディションに追加される形で、常時その門を開く。研究生は、応募者の中から採用され、研究生であることを伏せた一般配信者として活動をスタート。PCなども貸与された上で、ゲームと配信で実践を重ね、運営からのフィードバックを行い、研究生はデビューを目指す。なお、研究生はすでに存在するとのことだ。  限られた才能を刈り取るのではなく、グループにマッチしたタレントを育てる動きは、「にじさんじ」の「バーチャル・タレント・アカデミー」が代表的だ。VTuberには特殊な要求スキルも多い。最初から必要な力を持つ人材は少数で、自然と奪い合いになっていた。現実のタレント養成所のような「育てる」経路を作ることで、VTuberになれる存在を少しでも増やすことは、業界全体を延命させるカギになるだろう。  また、発売から一週間ほどたったモバイルモーションキャプチャー『mocopi』は、VTuberたちの手にも渡り始めているようだ。そして各々から様々な動画が投下されている。  朝ノ瑠璃は、自身のアバターを使った、光学式モーションキャプチャー『OptiTrack』との比較動画を公開した。業務用の高額なシステムとの比較という、実用性の高い検証動画だ。見比べてみると、細かなところで『OptiTrack』の優位性が目立つが、価格や機材の少なさを考えれば『mocopi』がいかに健闘しているかがわかるだろう。購入時の参考動画として、筆者も今後引用したい良い動画だ。  「刀ピークリスマス」が想定外のバズを起こしているピーナッツくんは、極寒の屋外で海パン一丁と『mocopi』を装着して、雪玉や水鉄砲などの”試練”に耐える体当たり動画を投稿した。実にYouTuberらしい企画だが、屋外でも活用でき、防水性能もある『mocopi』を活用した「外ロケ」動画という、やってみたいVTuberも多そうな企画だ。ある意味では体を張った検証動画と言えよう。  「にじさんじ」の月ノ美兎は、『mocopi』を手に入れてからいろんな「動きの小ネタ」をショート動画として投稿している。どこか愛嬌のあるぎこちない動きが多い。そして先日にはなぜか『ぼっち・ざ・ろっく』の1シーンを再現する動画を投稿した。こうした動きを活用する小ネタを、VTuberでも巨大なスタジオ不要で、気軽に作れるようになるのが『mocopi』のいいところだ。最も身近なユースケースとしてチェックしてみるとよいかもしれない。  業界でも『mocopi』採用の動きが見え始めた。山葵音楽学校プロジェクトは、等身大アバターライブシステム「Monolis」に『mocopi』導入を発表した。「Monolis」は縦長のディスプレイにVTuberを映し、現実のステージなどに登場させるシステムだ。リアルライブイベント向けシステムに早速組み込まれるあたり、注目度の高さがうかがえるだろう。  そして、発売時点で「VRChat」に対応している『mocopi』を、VRモードではなくデスクトップモードで使えるようにするアプリケーション/アバターギミックまで登場した。わかりやすく言えば、VRヘッドセットをかぶらずに「VRChat」でフルトラッキングを行えるようにするシロモノだ。また、自由度の高いメタバース「NeosVR」でも、個人が同様の仕組みを開発したとのことだ。VR機材なしで、VRメタバースに”身体ごと”行ける日も近いかもしれない。  発売から一週間ほどで、『mocopi』は非常に多くの活用例が生まれ始めている。今後対応アプリケーションが増えていけば、さらに使い道の幅が広がるだろう。今後のさらなる発展に、筆者も注目していきたいところだ。

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