インターネットエンジェル育成に、絵に描いたYakiniku……VTuberのゲーム配信で話題になった2022年のゲーム
2021年12月22日 18:12
インターネットエンジェル育成に、絵に描いたYakiniku……VTuberのゲーム配信で話題になった2022年のゲーム

 YouTuberやVTuberの配信における人気コンテンツである、ゲーム実況。プレイされるゲームとしては、『Apex Legends』、『Minecraft』、『Dead by Daylight』などが有名だろう。また、2022年に発売された『スプラトゥーン3』や『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』などのビッグタイトルをプレイする配信者も多い。 【画像】地雷系メンヘラ彼女を全力でサポートするゲーム  流行りのゲームを人気の配信者がプレイすることで、さらに大きなムーブメントが生まれることは往々にしてあるが、その逆で、さほど知名度は高くなかったものの、ゲーム配信をきっかけに大きく盛り上がったゲームも存在する。  そこで本稿では、2022年に発売されたゲームの中で、VTuberの配信を彩ったいくつかのゲームに焦点を当てて紹介していく。 ■『NEEDY GIRL OVERDOSE』  最強のインターネットエンジェル(配信者)を目指す、承認欲求強めの女の子・あめちゃん。彼女の”ピ(恋人でありプロデューサー)”となって、あめちゃん扮する、超絶最かわてんしちゃん(超てんちゃん)の配信活動をサポートしたり、心身ともによりそって二人三脚でフォロワー100万人の配信者を目指す大人気マルチエンディングアドベンチャーゲームだ。  本作は普段YouTubeで配信活動を行なっているVTuberたちが、プレイヤーとして超てんちゃんを育てるという構図の妙や、育成ゲームとしての面白さなどを視聴者に見せたことで、爆発的に流行したという経緯をもつ。  全編を通じ、地雷系メンヘラ彼女あめちゃんに対しての対応は、メッセージのやりとり、受け答えの全てにVTuberたちの個性が光る。また、超てんちゃんへの配信指示などのプレイを通して、VTuberたちの考えや配信に対しての姿勢なども一部垣間見ることができた。 ■『閉店事件』  ゲーム配信において、FPSなどと並ぶ屈指の人気ジャンルであるホラーゲーム。そこに属する『閉店事件』は、粗いポリゴンと独特な雰囲気で、古いビデオを見ているようなどこか不気味な世界観が特徴的なChilla's Artの新作タイトルだ。  本作の特徴は、スターバックス風のおしゃれなカフェバイトの閉店作業という、一見ホラーとは無縁のシチュエーションにある。ホラーゲームとしての面白さだけでなく、スターバックスの雰囲気がただようカフェパートも存在し、どこかシミュレーター系のゲームを見る楽しさもあった。  深夜の閉店作業、もくもくと作業をこなすなかで訪れる珍客やトラブル、それに対するVTuberたちの悲鳴や怒号などのリアクションは千差万別だ。なお本作には複数のエンディングが用意されており、さまざまな展開を見られるため、複数のVTuberの配信をチェックしてみるのもいいだろう。 ■『夜廻三』  続いて紹介するのは、『夜廻三』。夜の街を探索するホラーアドベンチャーで、日本一ソフトウェアの「夜廻」シリーズの第3弾だ。  可愛らしいキャラクターが活躍するのとは裏腹に、恐怖心をあおる、作り込まれたストーリー展開が人気の「夜廻」シリーズ。『夜廻三』では、呪いをかけられて記憶を失った主人公の少女を操作し、夜の街を探索しながら、呪いを解くカギとなる「思い出」を探していく。  「お化け」のいるフィールドを、懐中電灯の明かりを頼りに進んでいくという王道のホラーゲーム感を楽しめるだけでなく、集めた「思い出」から真実に近づいていく体験を、配信を見ながら一緒に楽しめる。 ■『Ib リメイク版』  2012年に発表された伝説のフリーホラーゲーム『Ib』が、10年の時を経てリメイク版として登場。ほぼ全てのグラフィックが一新、新要素もふんだんに盛り込まれ、オリジナルのファンも十分に楽しめるリメイク作品として話題となった。  本作は、両親と美術館を訪れた少女・イヴが、美術館の異変に巻き込まれるという展開の2D探索アドベンチャーホラー。美術館ならではのおそろしい雰囲気とキャラクター、独特な謎解きに多くのプレイヤーが魅了され、一大ブームを巻き起こした。  VTuberの配信でも、当時の思い出や記憶を頼りにした感慨深いプレイを見ることができた。コメント欄にもオリジナル版をプレイ済みのリスナーがあふれ、名作を懐かしむワイワイとした雰囲気に包まれていた。一方で、リメイクの方が初見プレイとなるVTuberも多く、新鮮なリアクションを届けてくれることも。改めて、『Ib』という色褪せない名作ゲームの底力を感じることができた。 ■『Yakiniku Simulation』  まさかの”焼肉シュミレーター”としてネット上を震撼させた『Yakiniku Simulation』。このゲームさえあればいつでもどこでも焼肉ができ、いくら焼いてもカロリーゼロという、夢のようなゲームだ。  ただただ肉を焼くという、いさぎよく尖ったそのゲーム性は、2021年に話題になった『PowerWash Simulator』を彷彿とさせる。なお、本作には「スコアチャレンジ」「タイムアタック」などさまざまなモードが用意されており、楽しみ方の選択肢はひとつにとどまらない。  VTuberの配信内容も、リスナーと擬似焼肉を楽しんだり、ひたすら肉を焼きながらリスナーとの雑談を行なったりとさまざまだった。ゲームがシンプルなだけに、それぞれの色が出る配信となり、ときには雑談に夢中になって肉を焦がしてしまうという場面も見られた。 ■『Cult of the Lamb』  キュートなトゥーン調のキャラクターや世界観とは裏腹に、カルト教団の運営を行うという異色のローグライクゲーム『Cult of the Lamb』。  プレイヤーは教祖となり、信者からの信仰心を集めたり、説教を行なったりと大忙しの日々を過ごす。ゲーム中にはハードな展開やブラックなシーンも多数登場するため、配信者の反応も顕著になりやすい。また教団の運営の一環として様々な教条(守るべき規則)を選択するのだが、その選択で教団の方向性が決まり、しっかりとプレイヤーの意志が反映された教団となっていくのが、見ていて面白いポイントだ。  「あのVTuberがカルト教団を作って運営するとしたら?」という好奇心から、多くのリスナーが『Cult of the Lamb』の配信を楽しんだのではないだろうか。 ■『Trombone Champ』  『Trombone Champ』はその名の通り、トロンボーンを演奏するシンプルなリズムゲームだ。  画面右側から流れてくる譜面に合わせ、マウスのポインターを上下に移動させて音を取って演奏する、という分かりやすさも魅力。  配信を見てもらえれば、すぐにこのゲームが話題になった理由がわかると思う。というのも、トロンボーンの「ブオーーーー」という独特の音は、音程を外せば外すほど情けない音が鳴って面白いのである。演奏できる曲は、ベートーヴェンの「運命」や「The Entertainer」など、誰もが一度は聞いたことのある曲ばかりなので、親しみをもって遊べる(観れる)。操作がマウスの上下だけ、という絶妙な難易度の高さが、数々の素晴らしい(?)演奏を生んでいる。  VTuberたちの絶叫とお腹がちぎれるほどの笑い声、情けなく音程が外れて響き渡るトロンボーンの音には、リスナーも釣られて笑ってしまうこと間違いなしだろう。 ■『地獄銭湯』  『地獄銭湯』は、先述の『閉店事件』と同じChilla's Artのホラーゲーム最新作。  銭湯で住み込みの仕事を行うというところから、本作のストーリーは始まる。日本の古き良き銭湯とその周辺の街並みが、何とも言えない不気味さとイヤな感じをかもし出している。水場とホラーの組み合わせは、いつの時代も怖いものだ。  もちろん本作でも、銭湯の番台や清掃というバイト業務はしっかり行う必要がある。不気味な銭湯で働きながら、探索や謎解きをすすめつつ、ストーリーを進めていくのだ。ホラーゲーム配信の醍醐味である絶叫ポイントも多めになっており、プレイ内容によってエンディングも分岐するため、配信者たちの反応を見比べるのも楽しい。 ■『Chicken Feet』  ニワトリが襲ってくるホラーゲームとしてネット上を騒がせた、『Chicken Feet』。巨大なニワトリのサムネイルが、YouTubeのおすすめ欄に多く並んだのは記憶に新しい。  遺伝子工学の研究所に派遣された主人公は、そこに解き放たれた人間を殺害するという恐ろしすぎる巨大ニワトリを鎮圧すべく、施設を探索することになる。  「コケコッコー」と叫びながら、施設をうろつく巨大ニワトリはかなりリアルかつ獰猛で、主人公はニワトリからひたすら逃げたり隠れたりするほかない。しかし、理不尽な巨大ニワトリに立ち向かいながら徐々に進めていくストーリーは、意外にもしっかりと作り込まれている。  巨大ニワトリから逃げ回るというだけでも十分面白いのだが、現時点で日本語には対応していないため、英語が話せるVTuberや配信者のプレイを観ると、よりゲームを楽しめるかもしれない。 VTuberと新たなゲームとの出会いを楽しもう  以上、2022年のVTuberにおける配信を彩ったゲームを紹介した。  メジャーなタイトルのゲーム配信が行われるのはもちろんだが、配信者の影響で話題になるようなゲームは、このほかにもたくさん存在する。配信をきっかけに自分もそのゲームを実際にプレイしてみたり、過去にプレイしたゲーム配信を見て、自分とは違うプレイに驚いたり、ニヤニヤしたりするのもゲーム配信を見る醍醐味と言えよう。  日頃からYouTubeを主戦場に戦うVTuberは、面白いゲームや新しいゲームへの感度が高い人が多い傾向にある。まだ見ぬゲームとの新しい出会いの場としても、VTuberの配信を楽しんでみてはいかがだろうか。

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