
アニメ聖地巡礼、町おこしを続けるには…1作品では難しい? 2011年以降ブーム集中
アニメや漫画の舞台となった地域を巡る「聖地巡礼」。作品の舞台となったことがきっかけで観光客が増え、自治体の名が広く知れ渡ることもあります。一方で、アニメの放送から時が経つとブームが落ち着くケースも。盛り上がりから10年以上経つ地域も多くなってきたなかで、今後も「聖地」であるためにはどうしたらいいのでしょうか? 元アニメ雑誌編集者で、コンテンツツーリズムに詳しい聖地巡礼プロデューサーの柿崎俊道さんに聞きました。 【画像】神レベルの〝痛絵馬〟たち 「鬼滅の刃」「夏目友人帳」「ガルパン」 ◆柿崎俊道さん 1976年生まれ。月刊誌「アニメージュ」(徳間書店)などのアニメ誌、アニメ関連書籍の編集・執筆を経て、ご当地イベントの企画などに携わる「聖地巡礼プロデューサー」となる。埼玉県のアニメイベント「アニ玉祭(アニメ・マンガまつりin埼玉)」第2回、第3回では総合プロデューサーを務めた。著書に『聖地巡礼 アニメ・マンガ12ヶ所めぐり』(2005年/キルタイムコミュニケーション)。 ーーアニメや「聖地巡礼」の盛り上がりから10年以上経つ地域も増えてきました。アニメで町おこしをしてきた地域も、ひとつの作品だけでは効果が維持できないのではないでしょうか? 秩父市では、「あの花」以降も秩父周辺を舞台としたアニメが公開されました。脚本は「あの花」と同じく、地元出身の岡田麿里(まり)さんです。 その後、秩父市が舞台になっていなくても、岡田さんの監督・脚本作品を上映するなど盛り上げていました。 ーー地域がファンに楽しんでもらうための工夫をしているのですね。ほか、柿崎さんが注目するアニメの「聖地」はありますか? 「あの夏で待ってる」(2012年放送)の長野県小諸市です。作品が放送された当時、地元で温泉旅館を経営されている花岡隆太さんが中心となって、アニメと地域活性化を考えていました。花岡さんはコンテンツ側との接し方がとてもうまいんです。 1作品だけで来てもらい続けるのは難しいだろうと考え、サイクリングの漫画「ろんぐらいだぁす!」など、小諸市を舞台にしたほかの作品ともコラボを続けてきました。 その結果、「自ら仕掛けてもいいのではないか」と気づいたそうで、コロナ禍でも、一般社団法人こもろ観光局が有名VTuberさんに小諸市のオリジナルソングとPVを作ってほしいと依頼し、その動画が話題になって多くのファンが小諸市に集まったと聞いています。 ーーアニメの「聖地」がきっかけでも、その後はアニメに限らずコンテンツを集めているのですね。 人々が喜んでくれるならゲームでもいいし、アニメでもいい。 小諸市はサイクリングコースとしても人気の場所で、自転車レース「グランフォンド KOMORO」の企画もしていました。 それもレースだけではなくて、前日イベントではサイクルウェアや自転車用品などのメーカーの出店、自転車を題材にしたマンガを描く作家のトークイベントなど、様々な展開をしています。 地域を盛り上げるためだったら、アニメにこだわる必要はないというのは、他の地域にはない視点です。 ーー今後も地域が「聖地」となり、町おこしをしていくためにはどこに注目していけばいいでしょうか? やはりインバウンド消費ではないでしょうか。 今も外国人旅行者に向けて「ざっくりアニメ」という切り口でやっている地域はあります。 でも実は、「アニメファン」という存在はいないんですよ。海外の人でも「マジンガーZ」が好き、「キャプテン翼」が好き、「NARUTOーナルトー」が好きという風に、解像度が上がってきています。 年間10~20作品しかテレビアニメが放送していなかった頃は、「アニメは何でも好き」という「アニメファン」はいました。 ただ、今はテレビアニメだけで制作本数は年間300本を超えています。劇場版や動画配信サービス限定の作品も含めるともっと多くなります。 そうなると全作品は見られないので、「アニメファン」というのは成立しないんです。好きなジャンルもそれぞれですし、「名探偵コナン」や「クレヨンしんちゃん」など、家族で観に行く作品もあります。 「アニメファン」かどうかでいうなら、もう国民みんなが「アニメファン」なのかもしれません。 アニメで町おこしをして国内外にアピールするならば、「アニメファン」というぼやけた存在ではなくて、個別の作品の「ファン」としてターゲットを絞ることが大事だと思います。
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