元少年院教官が教える「人間関係を切っていい人」の決め方、家族も恋人も関係なし
2022年12月08日 12:12
元少年院教官が教える「人間関係を切っていい人」の決め方、家族も恋人も関係なし

 親ガチャ、学歴コンプ、ぼっち―デリケートな悩みは家族や友人に打ち明けづらく、辛い気持ちを抱えたまま諦めている人は多いのではないだろうか。元少年院の教官という異色の経歴をもつVTuber、犯罪学教室のかなえ先生の著書『人生がクソゲーだと思ったら読む本 生きづらい世の中の突破術』(小学館)は、これらの行き場のない悩みに寄り添い、突破のヒントを与えてくれるはずだ。本著より、人間関係の悩みに対する回答を一部抜粋・編集してお届けする。 【この記事の画像を見る】 ● 受け身のコミュニケーションは ストレスが溜まりがち <お悩み> 人間関係に 疲れやすいのは私だけ? ただのスキル不足?  人間関係に疲れやすい主婦です。元々人付き合いが苦手なのですが、子どもの幼稚園のママ友だったり、義理の両親、パート先の同僚、さらにはご近所さんなどの関わる人が増えてきて徐々にしんどくなっています。別に相手から何かされたわけじゃないものの、ひとりになりたい衝動にかられて、ときどき家出をしたくなります。これは私に原因があるのでしょうか?この人間関係を続けていいのか、不安です。  <回答> 疲れた自分を抱きしめて。 アナタの抱える悩みは 全くおかしいものではない!  これ、意外と深刻な悩みです。まず伝えたいのは、世の中には人間関係に疲れやすい人がアナタ以外にも多くいるということです。これは「疲れている人もいるのだから我慢しろ」というニュアンスではなく「人間関係に疲れやすいアナタは変ではないよ」という意味で受け取ってください。  そもそも人間関係は誰かと繋がれているという安心感や新たな価値観の発見などの効果が得られる一方で、誤解や過度な気遣いなどによる精神的な疲労も生んでしまいます。特にストレスの多い人間関係を続けていると、ゆっくりと心の健康がむしばまれていき、メンタルの不調に繋がることもあります。  相手は自分とは違う他人ですから、距離感や価値観も異なります。そのため、ある程度同質性の高い集団に属していたとしても、細かい違和感や差異などに敏感な人にとっては人間関係を維持するだけでも大きな負担になるでしょう。  今回の相談者の場合、元々人付き合いが苦手とのことです。  人付き合いが苦手な人の特徴としては、相手の話に合わせてばかりで自分の思ったことをなかなか言えない性格だったり、過度に他人からの評価が気になってしまう性格だったりなど、自分から何か相手に発信することがそもそも苦手な人が多い印象です。  わかりやすく説明すると、双方向的コミュニケーション場面において受信過多な人ほど人付き合いが苦手なことが多いというものです。このような人は、発信したいことがあっても、どう発信して良いかわからない、もしくは発信を我慢してしまうことによるストレスを抱えてしまっているように思います。  発信したいことがあるのに、自分ばかり受け身でいなきゃいけないコミュニケーションってストレスになりますよね。しかも、自分のコミュニケーション能力に自信がなければ、なおさらです。人付き合いのストレスが相手に伝わった気がして、さらにそれがストレスになり、受け入れてもらえていないような気がしてしまい、またストレスが相手に伝わっている気がしてしまう……という負のループ。  どこかで断ち切らないと、本当に心を病んでしまいそうですよね。 ● 人付き合いのガス抜きとして 「ひとりの時間」を大切に  さて、ここで少しアナタを深掘りしていこうと思います。  今回のしんどくなる相手方として、幼稚園の保護者(いわゆるパパ友、ママ友ですね)、義理の両親、パート先の同僚などなど、主に家族ではない相手ということですよね。では、自分の子どもや旦那様に対してはいかがでしょうか?  今回は横に置いておきますが、何かされたわけではないものの苦痛を感じているということであれば、興味のない相手と義務的に付き合わざるを得ない状況下で、自然と周りに気を遣って自発的な言動を我慢していることが多いのではないかと思います。  これは元少年院の先生をやっていた私の経験則になりますが、幼少期から自分の発言が許されなかったり、両親から自身の意思決定に関して否定的な言葉を投げかけられて育ったり、受け身のコミュニケーションがメインだった人は、大人になって自分の考えや意見を持つようになっても幼少からのコミュニケーションが癖づいて、相手に思ったことが言えなかったり、自然と物事に妥協してストレスを抱えてしまう傾向がありました。  そのような人におすすめしていたのが、ひとりで過ごす時間を意図的に設定するということです。生活をする中で無意識に人と付き合わなければいけないと思いがちですが、別にそんなことはありません。私もひとりになりたいときは、家にテントを張って引き籠もったり、車の中にマットや布団などを敷いて車中泊をしたりします。  また、用もないのにトイレに籠もって小説を読むことや音楽を聴きながら半身浴など、お金をかけずに自分がひとりになって落ち着くための時間を作るのもアリです。  職場でもできるだけ人と関わる時間を減らしてみましょう。  許される範囲で始業時間ギリギリに出勤することは、私もよくやりました。またママ友との付き合いも毎回を2回に1回くらいに減らしてみるなど方法はあると思います。  嫌われてしまうかもしれないと不安になるかもしれません。しかし、生活スタイルが変わってしまうことは誰にでもありますし、煩わしい人間関係からゆっくりとフェードアウトしていく能力も大切です。いきなりやるのは大変ですから、誰かの助けや協力を受けてぜひ実践して欲しいと思います。  どんな人にとってもガス抜きは必要なことです。家出してしまいたい気持ちも理解できますが、ご家族などが心配してしまうので一旦信頼できる人の協力を仰いでひとりになって落ち着く時間を持つようにしましょう。  また、これは素人見解ですので、本当に心が疲れていると感じている場合には専門医などのカウンセリングなどを受けてみてください。アナタの状態を把握した上で、適切なアドバイスなどをもらえるでしょう。 ● 「誰と付き合うのか」ではなく 「誰と付き合わないのか」  「人間関係に悩んでいます」――私のもとには、家族、職場関係、友人、恋人など様々なお悩みが視聴者から寄せられます。私は人間関係の悩みを「人間の三大お悩み」のひとつと捉えており、人間が社会性動物であるがために生じるストレス要因なのだろうと認識しています。すごくわかりやすく言えば、他者と上手く交わろうとするからこそ生まれる悩みであるということです。  私も最近までは人間関係についてはかなり悩むことが多く、時には体調にも影響を及ぼすことがありました。ただ、今は人間関係が強いストレスになることはありません。VTuberとして活動を開始し、現実世界を飛び越えてSNSなどで繋がる人も増えたのに、「ストレスがないなんて変わっているね」とよく言われます。  配信で視聴者に人間関係の悩みがないと話したところ、  「そりゃ人を見下していたら無いよな」  「相手はかなえ先生との関係にストレスを感じているかも」  などなどご指摘をいただき、急に不安になったことがあります(笑)。  あくまでも私の場合になりますが、「誰と付き合うのか」ではなく「誰と付き合わないのか」を決めているため、すごく気分が楽になっているのかもしれません。ちなみに関わる人間の選別を行う際、「家族」「親友」「恋人」「仕事仲間」など私から見た相手との関係属性は全く考慮しないようにしています。  関係属性を考慮するようになると、判断基準が個別化して複雑かつコストがかかるようになるからです。まず、大前提として「私のことを大切にしてくれる人を、私は大切にしよう」と基準を置き、その上で状況に応じて「家族」「親友」「恋人」「仕事仲間」などの関係属性ごとに分別するのです。  今の話を聞いて、「おいおい関係属性を考慮しているのでは?」と思った方もいるかもしれません。しかし、最初の「私のことを大切にしてくれる(尊重してくれる)人」を等しく通過してから、続いて私と相手の関係に名前をつけるだけなのです。  自分のことを大切にしてくれない人を「家族だから」「友人だから」という理由で自分の側に置き続ける意味はありません。  無駄です。  これははっきり言っておきます。  そもそも自分の人生は自分のものですから、相当なことがない限り関わる人間の決定権ももちろん自分にあるわけです。理不尽な目に遭わされたり、一方的に利用されたりするだけの関係を保持し続けることは、自分の人生にとって無益どころか有害と言えるでしょう。  考えてみれば当たり前の話ですが、関わる人間が増えていけば当然関わる人間のことで悩み事を抱えるリスクは上昇します。対人スキルの高い人は、どんどん関わる人間を増やしても良いと思いますが、コミュニケーションスキルに不安を覚えている人は誰と付き合うかではなく、誰と付き合わないのかを決めると悩みは軽減されるかもしれません。  関係を切ることは悪いことというのは間違いです。相手が悪くなくとも、自分が関係を保持し続けることで苦痛を感じているのならば、関係図からそっとフェードアウトする方がお互いのためです。  執着するな、捨てろ。  関係を切ることは悪いことではない。  まだ関係を築くのに必要な「レベル」が足りなかっただけ。  いつか私のレベルが上がったときに、また機会があれば関係を築きましょう。  これくらいでいいと思います。 ● 他人の変化を期待せず 自分の受け止め方を変えてみる  また、他人に過度な期待を寄せるのをやめるともっと楽になるでしょう。  他人は自分と異なる人格を有する存在ですから、全て自分の思い通りに動いてくれるわけではありませんからね。自分の常識、他人の非常識です。  悩み相談を送ってくる方の中には、「相手が○○してくれない!」「○○するべき!」みたいなただのマイルールを法律のように振りかざして相手を非難される方がいますが、そういう人ほど意識して欲しいことですね。  私が大切にしている言葉に「9割他人のせい、1割自分のせい」というものがあります。これはほとんど他人のせいにして良いという意味ではなく、全てアナタのせいではないけれども、残り1割の自分の受け止め方を変えることで悪い状況は180度変わるよ、という意味です。人間関係も同様で、自分がどうするかで状況は大きく変わります。  相手に変化を求めることほど無駄なことはありません。  無理だと思ったら、さっさと切る。  もう少し様子を見ようと思うなら、様子を見る。  相手は相手の考えや常識があると許せる器量があるなら、そのままにする。  期待した行動を相手がしてくれなかったとき、「あぁ、この人のこういった面まで知らなかったな」と自分の認識を改めるしかありません。なぜなら、人間の内面も社会と同様に多面的に構成されている一方で、私たちはその一部分だけを観測して相手を評価しているため、ズレやバグが発生するのは仕方がないことだからです。  裏切られることを過剰に恐れるあまり、他者を惑わせていませんか?  傷つけられた経験を理由に、攻撃的になっていませんか?  人間関係の失敗は自分を成長させるチャンスです。  「自分が悪い」という単純な受け止めではなく、現状の私はどうなのか、どう改善すると良くなりそうか、という前向きな考えをベースに人間関係を築けるようになると、自然と対人スキルも向上しますし、対人関係にまつわるストレスも大幅に減るでしょう。

ダイヤモンド・オンライン

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