
「壊し屋」小沢一郎氏の狙いは泉健太代表への牽制だけか 関係者がいぶかしがる今後の離党の可能性〈dot.〉
政界の「壊し屋」が再び暗躍することになるのだろうか? 立憲民主党の小沢一郎衆院議員が最近になって動きを活発化させている。 【写真】「壊し屋」に狙われた?立憲民主党の代表はこちら 東京では、これまで共産に配慮して候補者を擁立していなかった選挙区においても「なるべく候補者を立てるように」と都連幹部に発破をかけている。 一方で都連は、東京には共産票が一定数あり、選挙協力は有益であるとして、共産との候補者調整を進めていく方向で選挙の準備を進めていた。 しかし、共産は泉代表の方針に反発するような形で菅直人衆院議員のお膝元である東京18区に候補者を擁立すると発表。 この地域では、これまで市民連合を介した共産との共闘を全面的に進めることによって勝利を収めていただけに、都連内では動揺が走った。 都連幹部からは「候補者を降ろしてもらうために、次期衆院選に向けて、他の選挙区を5、6個共産に譲っても良いのではないか」という声が出ており、泉代表との路線対立はますます深くなっている。 また、都連では幹部らが松原仁衆院議員と立候補する選挙区を巡って揉め、最後は松原氏が立憲を離党してしまうという騒動も起きており、泉代表の都連への不信感がさらに強まっている。 こうしたなか、泉代表の方針を牽制するかのように立ち上がったのが「一本化の会」だ。 実際、会の設立にあたっては、共産との選挙協力を推進している都連の手塚仁雄幹事長が呼びかけ人集めに奔走し、会見では小沢氏の隣に座っている。 立憲関係者は「泉代表は次期衆院選について『150議席が必達目標、達成できなければ辞任する』と背水の陣を敷き、そのために全国で候補者を200人以上擁立すると明言しており、共産との調整は考えずにとにかく積極的に擁立しようとしている。しかし、小沢氏と都連の動きはそれにブレーキをかけるものになるだろう」と解説する。 21日に報道陣の取材に応じた泉代表は、「一本化の会」や共産との選挙協力について聞かれると「解散が少し先送りされたということで、全体状況は考えていきたい。どういう可能性があるのか、様々な選択肢を幅広に考えなければならないと思う」と述べ、候補者調整の可能性について言及するなど、以前よりも柔軟な姿勢を示した。 小沢氏の牽制が利いた形だが、一方で永田町内からは「小沢氏の動きは泉氏を牽制するだけで終わるだろうか」といぶかしむ声も上がっている。 そもそも小沢氏は、2021年に行われた立憲の代表選では泉氏を応援していたが、その際に約束していた人事上の処遇を反故にされたことから反泉路線となり、長く対立関係が続いている。 立憲関係者は「立憲の支持率が伸び悩むなか、場合によっては、また仲間を引き連れて離党する可能性もあるのではないか」と声を潜める。 また、小沢氏が活動を活発化させる一方、重鎮の選挙アドバイザーや、自身に近い大物記者と会い、情報交換を積極的にしているという情報もあり、すでに政局に向けて準備を進めているのではないかと言われている。 ただ、年内の解散・総選挙が有力視されている状況で、むやみに政局を起こしてしまっては、党を壊すだけでなく、反動で自身も壊れてしまうかもしれない。 はたして小沢氏が「壊し屋」として再び勝負に出るのか。永田町全体が固唾を呑んで見守っている。 (ジャーナリスト・宮原健太) ■みやはら・けんた 1992年生まれ。2015年に東京大学を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡で事件記者をした後、政治部で首相官邸や国会、外務省などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動。YouTubeチャンネル「記者YouTuber宮原健太」でニュースに関する動画を配信しているほか、「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしても活動している。取材過程に参加してもらうオンラインサロンのような新しい報道を実践している。
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