“パラレルシンガー”七海うらら「歌には痛みを和らげる力が」闘病生活きっかけに音楽の道へ
2022年06月24日 05:06
“パラレルシンガー”七海うらら「歌には痛みを和らげる力が」闘病生活きっかけに音楽の道へ

 七色の光で業界を照らす。リアルとバーチャルの2世界で活動する“パラレルシンガー”七海うららが、23日にデビュー2作目となる「Trigger」を発売した。  TikTokに投稿した人気曲をカバーする「歌ってみた」動画で注目され、エイベックスから5月にメジャーデビュー。基本的に顔出しはせず、バーチャル世界では自身を模したイラストでVTuberとしても活動する。このほど取材に応じ、新たなチャレンジへの抱負や、がんなどの闘病時代に感じた音楽の力について語った。  テーマカラーは水色。青みがかった毛先に、ネイル、そして耳元にはイヤリングが光る。取材に訪れると、イラストに描かれた通りの七海が、そこにいた。  「私のそのままの姿を絵に落とし込んでもらったんです。もともとトレードマークとしてダイヤモンドの絵文字をつけて活動していて。私の人生と掛け合わせた時に、石がカットされて初めて輝くという性質ともマッチするなと思いました」  5月にデビューし、「名刺代わり」という3カ月連続リリースのまっただ中。23日にリリースした「Trigger」はその第2弾になる。「オープニングテーマみたいな」と語った、さわやかなメロディーが特徴のメジャーデビュー曲「ダイヤノカガヤキ」から雰囲気は変わり、高速ラップやシャウトなども織り交ぜた力強い一作に仕上げた。 「1作目は私の人生にもかけた楽曲で、今回は歌で殴るというか、攻撃性のあるパンチの強い曲なので、ギャップでやられてほしいです(笑い)。まだ言えないですが、3作目もまた違う一面が見られると思うので、そちらも楽しみにしていてください」  もともと“七色の歌声を操るシンガー”としてSNS上でその名が広まった。昨年は自身のYouTubeチャンネルに投稿したショート動画が“バズり”、数千人ほどだった登録者数は一気に30万人を超えた。同年の音楽系YouTuberの登録者数伸び率で堂々の日本1位を獲得。エイベックスの音楽系YouTuberに特化したエージェンシー「muchoo」(ムチュー)の最初の専属契約アーティストとしての所属も決定した。  「今までもスカウトなどはあったのですが、自分でやっていけると思って全て断っていました。でも、個人の範囲ではできないこともできるようになるんじゃないかと考えるようになったのと、造語であるパラレルシンガーというイレギュラーな活動スタイルを認めてくれたことも大きな理由でした」  学生時代は軽音部のボーカル。好きだった音楽への道を踏み出したきっかけは、2度経験した闘病生活だった。1度目は大学生の頃。脳腫瘍が発覚し、小脳を摘出した。2度目は大卒後のOL時代。乳がんと診断され、計半年間の入院生活を余儀なくされた。  「病院でもアーティストのライブやミュージカルを見たりしていました。麻酔が効かないくらい痛い時は、音楽を聞くことでそれが和らいでいて。私は歌にはそういう力があると思っています」  今はどちらも克服し、定期的な経過観察に通えばよい状態に。病床では「何かを表現したいと思いつつも、普通に就職していた」自身の人生を思い返し、「1回しかない人生。本当にやりたいことに取り組んでみよう」とSNSでの投稿を始めた。  「みなさんも大きな病気じゃなくても、抱えているもの、しんどいもの、苦しいもの、いろいろあると思います。自分もそうした痛みを和らげられる人になりたいなと思っています」。  ついにメジャーデビューも果たし、8月4日には初の単独ライブを都内で行う。「新しい出会いをたくさんしたいですし、リアルな姿とバーチャルを掛け合わせた演出もあるかもしれません」と意気込んだ。  顔出ししていないアーティストにはAdoらもいるが「(野球の)WBCの時の大谷翔平選手の言葉じゃないですけど『憧れるのはやめましょう』と思っています(笑い)」と口にし「もちろんずっと聞いていましたし、リスペクトもありますが、自分は自分の良さを届けられるように。自分にしかできない表現もあると言い聞かせながら頑張っていきたいです」と力を込めた。  業界でも新しい“パラレルシンガー”というアーティストの形。「中途半端になるのはダメですが、自分の可能性を狭めず、表現する場所はたくさんあるということを伝えていきたいですし、そう思ってくれる人が増えたらいいですね」。そのきっかけをかみしめながら、これからも歌声を届けていく。【松尾幸之介】

日刊スポーツ

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