
「オタク社員の熱すぎるパッション…!」“見せる”推し活グッズ成功の裏側、あえて自社キャラクターを“引き立て役”に
「推し活」ブームで、堂々と推しグッズを身につける人が増えた昨今。様々な企業から推しを飾るための「推し活グッズ」も登場し、活況を呈している。だが、まだブームが本格化していない4年前に、早くも推し活グッズを開発したオタクが、サンリオに2人いた。そもそもサンリオキャラクター自体が推しの対象となるはずだが、2人が企画したグッズは、キャラクターが別の“推し”を彩るというもの。果たしてそれはOKなのか?「日陰だった推し活を認めてくれた」と感謝の声も届く、全オタクに捧ぐ「推し活グッズ」とは? 【画像】「その発想はなかった!」うちわケースに銀テホルダー!? オタクの熱量とアイディアが満載の推し活グッズ ■「推し活」未経験者にはナゾ? カワイイ×カワイイに親和性見出したオタク社員 2021年に新語・流行語大賞にノミネートされ、今やすっかり定着した「推し活」という言葉。推しの対象はアイドルやアーティスト、俳優などの有名人から、アニメやゲーム、Vtuber、さらにキャラクターなどのモノ、コトなど多岐にわたる。現在では、推し活をすること、推しについて話すことに抵抗がなくなり、街を歩いてもSNSを見ても、自らの推しを身につけ、堂々とアピールする人が増えた印象だ。 こうしたブームは、推しの公式グッズにとどまらず、それを「収納する」「より良く見せる」「傷つけずに運ぶ」などの用途を持つ商品が望まれるように。以前は、従来の商品を拡大解釈して活用する人が多かったが、いまでは様々なメーカーが推し活を楽しむための専用グッズ=「推し活グッズ」を展開している。 サンリオが2019年から展開している『エンジョイアイドルシリーズ』も、推し活をより楽しくするこだわりが盛り込まれたシリーズ。そのラインナップは「うちわケース」、「銀テホルダー」、「アクリルスタンドのお部屋」、「チェキ用スタンド」、「ぬいぐるみ用ポーチ」…などなど、推し活未経験者にとってはナゾの商品も多い。しかし、これが売れに売れているのだという。(「銀テホルダー」は販売終了) 「サンリオのキャラクターがあしらわれていますが、このシリーズの用途はキャラクターそのものを愛でていただくことではなく、アイドルをはじめとした推し活をする方を応援すること。いわゆる“推し活グッズ”と呼ばれる商品シリーズです」 そう説明してくれたK子さんとC子さんは、共に某アイドルを熱く応援する「オタクです」と自己紹介。自らも行う推し活を通して、『エンジョイアイドルシリーズ』を企画・開発したサンリオの社員だ。 「オタクにとって推しはカワイイ存在。サンリオのキャラクターはカワイイの代名詞。その親和性の高さは、肌感覚で確信していました。“カワイイ×カワイイ”で推し活のテンションもMAXになる!(笑)。そんな発想に加えて、推し活をするなかで『もっとこういうモノがあったらいいのに』という困りごとがたくさん潜んでいることにも気づいたんです(K子) このシリーズを展開する前に2人が開発した商品の1つが、オタク用語を盛り込んだ予定シール「アイドルファンシール」だった。 「スケジュール帳に貼るためのシールに“フラゲ”や“銀テゲット”といったオタク用語をたくさん入れたところ、SNSで大きな話題になったんです。このシールはある程度自由にやらせてもらったのですが、エンジョイアイドルシリーズ第1弾の「銀テホルダー」のときはそこまですんなりとは行かず。社内の非オタクの方々に『“銀テ”とはコンサートで舞い散る銀テープの略で、オタクにとっては最高の宝物』と説明するところから始まりました。当時の上司は理解がある方だったんですけどね。このころはまだ、推し活という言葉も一般的ではなかったんです」(C子さん) 予定シールのヒットを受けて、『エンジョイアイドルシリーズ』の企画も通った。しかし2人がオタク目線で開発した商品も、当初は「売れないのでは」という懸念の声も社内から聞こえてきた。 「たとえば『うちわケース』。うちわは代表的なファングッズですが、紙製なので擦れたり破損したりしやすいんです。だけど、推しを傷つけるなんてあり得ないこと。うちわを守りつつ、持ち運びや出し入れに便利で、かつ可愛く彩る商品があったらオタクみんなが喜ぶはず。そんな熱いプレゼンをして押し通しました。今ではシリーズ随一のヒット商品になっています」(K子さん) 商品開発の参考にしているのは、現場リサーチのほか、Twitterでの要望もふんだんに取り入れている。 「近年は推し活ブームで、さまざまなところから推し活グッズが展開されるようになりました。ただ、中には『推し活にあまり詳しくない人が作っているんだろうな』と見受けられる商品も少なくないんです。本シリーズは、単にサンリオのキャラクターが付いているからカワイイ、だけじゃない。機能面や快適性、かゆいところに手が届くちょっとした工夫など、オタクだからこそわかるこだわりを詰め込んでいます」(C子さん) しかし、ここで1つ疑問だ。『エンジョイアイドルシリーズ』は、あくまで持つ人それぞれの推しを引き立てる存在。社内で、「サンリオのキャラクターがサブ的な立ち位置になる」ことへのジレンマや反発はなかったのだろうか。 「主役はサンリオキャラクターではなく、あくまで“推し”でいいと思っています。当初は、『うーん』と言っていた非オタク社員もいましたが、今では『推しに寄り添うことで、サンリオキャラクターにも愛着を持っていただける』という相乗効果を認めてもらえているのを感じます。『エンジョイアイドルシリーズ』はアイドル、二次元、スポーツ選手、そしてサンリオ以外の競合キャラクターまで、推し活をするすべての方を応援します!」(K子さん) 推し活というアクティビティへの認知が広がり、ファンのマインドにも変化が見られようになった現在。かつては熱い推し活をどこか恥じる「隠れファン」という言葉もあったが、今では堂々と推しグッズを身に付けて街を闊歩する人も多い。 「たしかに、アイドルうちわも、少し前なら“隠して持ち歩けるような商品”が求められたかもしれません。ですが今は、“推し=アイデンティティ”といった感覚が強くなっています。サンリオがその一助になれていたら…。Twitterで『日陰だった推し活を認めてくれたサンリオ、ありがとう!』というつぶやきを見たときには、とてもうれしかったですね」(C子さん) ■“量産型”からナチュラル嗜好へ、アイドルファンの変化に見える一般化 ひと昔前には、やや蔑むニュアンスが含まれていた「オタク」という言葉も、今ではためらいなく自称できるようになっている。さらに、市民権を得た「推し活」というワードがマイルドさに拍車をかけているようだ。 「実は、アイドルファンにも変化が見られます。少し前までは、いわゆる“量産型”のフリフリ服が定番。でも近年は、ナチュラル嗜好の方も現場で多く見受けられるようになりました。そうした推し活の一般化を受けて、『エンジョイアイドルシリーズ』でもトレンドのくすみカラーをメインとした新作『ニュアンスカラーコレクション』を発売します。このように、ユーザーのみなさんの変化には敏感に対応していきたいですね」(K子さん) オシャレでカワイイ見た目はもちろん、オタク視点での工夫が詰まった『エンジョイアイドルシリーズ』には、“推し活グッズの発明”とも言うべきギミックも多い。最近はこうしたノウハウを、公式アイドルグッズなどに提供する動きもあるという。 推しへの愛を通じて、すべての推し活をする人たちを幸せにし、商品もヒット。オタクの勝利を手にした2人に拍手を贈りたい。 (文:児玉澄子) (C)2023 SANRIO CO.,LTD. 著作(株)サンリオ
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