飲み会復活で街に溢れる酔っぱらい…元少年院法務教官が警告する「お酒と暴行事件」
2022年06月16日 07:06
飲み会復活で街に溢れる酔っぱらい…元少年院法務教官が警告する「お酒と暴行事件」

 コロナ5類への移行に伴って、「コロナ前の日常」が戻りつつある。会社や大学などでも飲み会やイベントが制限なく行われるようになった。フェスやお祭り、花火大会など初夏のイベントも続々開催・発表されている。実際に、「東京都内における繁華街の混雑状況」のデータを見ると、歌舞伎町などの繁華街の21時の滞在状況を見ると、コロナ前の7~8割まで戻ってきている(※1) 【アルコール依存症チェック】あなたはいくつ当てはまりますか?  しかし、丸3年間の自粛期間の影響でお酒の席に免疫がない人や久々の飲み会でタガが外れてしまう人も多い。さらに、大学などでは今の時期、サークルなどが決まり、飲み会の回数も増える頃だ。  楽しく飲むつもりが、知らぬ間に巻き込まれてしまうお酒のトラブル。女性はもちろん、男性も巻き込まれると大事になるお酒にまつわるリスクの回避法を、元少年院法務教官で「犯罪学教室のかなえ先生 V Criminologist」というチャンネルでVTuberとして活動し、『人生がクソゲーだと思ったら読む本: 生きづらい世の中の突破術』などの著書もある「かなえ先生」に解説してもらった。 ---------- ※1:東京都政策企画局「東京都内における繁華街の混雑状況および滞在人口(人出)の増減状況」より ----------  「泥酔は単なる『失敗』では済まない可能性もあります。死亡することもある急性アルコール中毒の危険性はもちろんですが、酔って道や駅構内で寝ているうちに金品を持ち去られるなどのリスクもあります。  お酒の場をめぐるトラブルについても急増しており、マッチングアプリで出会った女性に誘導されてボッタクリ店に連れ込まれ、昏睡強盗に遭ったり、超高額な料金を請求されるなどのトラブルも増えています。歌舞伎町がある新宿の駅前に『マッチングアプリで知り合った女性についていかないように』旨の立て看板が置かれるようになるなど、深刻な被害の実態が伺えます。  また、過去には学生や若者による酒がらみの女性への卑劣な事件もたくさんあります。最近の事件としては、2022年に起きた同志社アメフト部員による性的暴行事件(※2)が大きく報道されました。ほかにも有名大学のサークルのコンパなどで性的暴行を行った事件は少なくありません。多くの人が飲み方をわかっていない、もしくは忘れてしまった今、同じような卑劣な犯罪が頻発してしまうのでは、と個人的に危機感を覚えています」(かなえ先生)  最近の若い世代はアルコールを飲まない人も多いというが、そうはいっても、大人数の飲み会では、盛り上がって気分が高揚し、ついノリで飲んでしまいがちだ。周囲の雰囲気や煽りに押されて、今まで飲んだこともない酒をガブガブ飲んでしまう。酔った勢いで大はしゃぎして恥をかいたり、ゲーゲー吐いて服や持ち物を汚したり、強烈な二日酔いに見舞われる程度で済むならまだかわいいものだが、楽しいはずの飲みの席がきっかけで事件や犯罪に巻き込まれるのは大問題だ。 ---------- ※2:同志社アメフト部員による性的暴行事件……同志社大アメリカンフットボール部の男子部員4人が、彼らが強引に飲ませた強い酒に酔って抵抗できない状態の女性に性的暴行を加えた事件。防犯カメラには、自力で歩けないほど酔った女子大学生を4人が抱きかかえて部屋に連れ込む様子が写っていた。さらに暴行の様子をスマートフォンで撮影して、仲間内でその動画を共有。これが逮捕時の動かぬ証拠となった。 ----------  「注意したいのは同席者が故意に泥酔を狙うパターンもあることです。大学サークルの中にはイベントサークルなどと銘打っているものの、はっちゃけた飲み会がメインで、仲間内で示し合わせてお酒を強要し、前後不覚になるまで酔わせ、女の子を主要メンバーがお持ち帰りするのが真の目的なんていう“ヤリサー”という蔑称で呼ばれている怪しいものもけっこう多いです。  これは僕の学生時代から存在していたものですが、当時は女性同士で危険なサークルは情報共有されていましたね。しかし、コロナ禍で飲み会が少人数&クローズドなものになってしまったため、新入生などは危険かどうか判断するのはますます難しくなっていると思います」(かなえ先生)  過去の事件でいえば、有名なのは早稲田大学の『スーパーフリー』というサークルが起こした常習的な輪姦事件が有名だが、こういった事例はその他にも東京大学、京都大学、慶應義塾大学、明治大学など、名だたるブランド大学で類似の事件が起きている。有名大学生のキラキラした陽キャ揃いなサークルに憧れて入会したものの泥酔した結果、性被害に遭ってしまい、心に深い傷を負った女性は表面化している被害者の何十倍・何百倍もいるのではないか。  そもそもお酒を飲んでいいのは20歳以上。現役で大学に入ったばかりの18、19歳は法律上、お酒を飲んではいけない。2022年に成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたが、飲酒や喫煙、競馬などの公営ギャンブルは以前と変わらず20歳にならなければNGだ。  「所属するサークルだけでなく、合コンや行った店で仲良くなったグループ(同志社アメフト部事件はこのパターン)との飲み会、まだよく素性がわかっていない相手との1対1のデートであっても、泥酔させて性加害、となるケースは少なくありません。  とにかく女性には、よく知らない人と飲む場合、警戒しすぎくらいに節制してちょうどいいと思います。男女問わずやたら飲むように促してくる相手には要注意です」(かなえ先生)  コンパ以外にも、夏休み中のサークル合宿・旅行の部屋飲みは、他人の目がない仲間だけの密室状態になるので、別の意味でも危険度は上昇する。よからぬことを企むメンツが混じっていたら逃げるに逃げられないし、そんな場面で未成年の急性アルコール中毒者が出れば「表ざたになるとヤバい」と救急車の要請もためらってしまうこともある。飲みすぎは命や自分の尊厳に関わるリスクであることを、強く意識してほしい。  後編では、引き続きお酒の席で気を付けたいポイント、酒を強要されたときの断り方について引き続き、かなえ先生が解説する。

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